最新記事

人権問題

韓国・仁川空港に住むアンゴラ人家族 「人権派」大統領の国は難民申請どころか入国も拒否

2019年6月21日(金)17時10分
桑原 りさ(キャスター)*東洋経済オンラインから転載


韓国・仁川空港のルレンド一家 Toyokeizai / YouTube

ルレンド夫人は大学で会計学を学び、結婚前はコンゴの信用金庫で働いていたという。教育とキャリアに恵まれたルレンド夫人は、その重要性を実感しているのだろう。何よりも子どもたちの教育を望み、空港内では支援物資として届いた教材で、子どもたちに厳しく勉強を教える姿が印象的だった。

「人を助けたいから医者になりたい。午前中は医者になるための学校に行って、午後はダンスの学校に行きたいの」と目を輝かせて勉強するロデちゃん。筆者が「アンゴラの学校のお友達に会いたくない?」と尋ねると、「会いたいけど、アンゴラに帰るとバーンって殺されるから帰りたくない」と、ロデちゃんは銃で撃たれるポーズをした。その姿に思わず悲しい表情で返した筆者に対し、彼女は「ノーノー! スマイル!」と言って、筆者の表情をまねした後、大きな笑顔でおどけて見せた。

小都ちゃんの存在が大きな支えに

newsweek_20190621_164434.jpg

小都ちゃんから届いた手紙(ロデちゃん提供)

そしてロデちゃんは、一枚のポストカードをうれしそうに見せてくれた。熊本の小都ちゃんからの手紙だった。「ハーイ、ロデ、愛してる。大丈夫? また会いたい。小都」と書かれていた。 アジアで見つけた大事な友達、小都ちゃんの存在は大きな心の支えになっていることだろう。

ルレンド一家の取材後、小都ちゃんに報告の連絡をいれた。小都ちゃんが届けた洋服をロデちゃんが着ていたことを伝えると、「私の友達もいらない服があるかもしれんけん、相談してみようかな」とうれしそうに話し、自分に何ができるのかを模索し続けていた。

実は偶然にも、小都ちゃんの父親ウィーさんは、2才のときにベトナムからアメリカへ渡った難民だったという。ウィーさんは「小都を誇りに思う。彼女は直感に従って正しいと思うことを判断し、行動している。小都のその想いを守るために、親としても全力を尽くしたい」と話した。

小都ちゃんのように目の前の他人に対して心を寄せる共感力と行動力があれば、私たちはもう少しあたたかい世界を作ることができるのかもしれない。6月20日「世界難民の日」を前に、大人のあなたたちには何ができますか、と小都ちゃんにまっすぐな問いを投げかけられているような気がしてならない。

日本では報道されていないが、韓国では、ルレンド一家の様子はテレビなどで報道されており、賛否両論が巻き起こっている。それにしても、韓国はなぜルレンド一家の受け入れを拒んだのか。そして、7月に予定している第二審へ向けてのルレンド一家を取り巻く動きについて、次回詳しく伝えたい。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中