最新記事

ヘルス

他人の便で病気を治す糞便移植、ただし移植する便には気を付けて──アメリカで1人死亡

What is a Fecal Transplant? FDA Issues Warning After Patient Death

2019年6月18日(火)16時50分
キャサリン・ハイネット

移植の前に、良い便か悪い便かをスクリーニングする必要があるとわかった LuckyBusiness/iStock.

<糞便に含まれる有益な細菌の移植によって患者の腸内バランスを回復する糞便移植で死亡者が出た>

アメリカ食品医薬品局(FDA)は6月13日、糞便移植に関して注意を促す警告を発表した。この治療を受けた2人の患者が「健康を害する」感染症を発症し、1人が死亡したためだ。

この患者2人の治療に使われたドナーの便には、危険な薬剤耐性菌が含まれていた。ペニシリンを含む数々の抗生物質に耐性を持つ病原性大腸菌だ。

医療スタッフたちは、ドナーの便にそうしたタイプの細菌が含まれていないかを確認するためのスクリーニングを実施せずに移植を行っていた。

さらにFDAによれば、患者は2人とも免疫機能が低下していた。

糞便移植では、健康なドナーから採取された有益な細菌を含む糞便が患者に移植される。

ジョンズ・ホプキンス大学医学部のウェブサイトによれば、この治療法は「便微生物移植」、または「腸内細菌療法」と呼ばれている。

抗生物質に殺された良い菌を補充

医師は、移植前にまず、ドナーのサンプルに感染症を引き起こす細菌が含まれていないかをスクリーニングしなければならない。13日に出されたFDAの警告は、すべてのドナーサンプルについて、薬剤耐性細菌に関する各種検査を実施するよう呼びかけている。

スクリーニングを受けて問題ないとされた便は通常、生理食塩水に入れて撹拌され、大腸内視鏡によって患者に投与される、とジョンズ・ホプキンス大学医学部のウェブサイトは説明する。場合によっては、経鼻十二指腸チューブが代わりに使われることもある。鼻から小腸までチューブを通すということだ。

同サイトによると、こうした治療法は、クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)が再発した際に使われることがある。CDIは、ディフィシル菌と呼ばれる細菌に感染して腸粘膜に炎症が起きる感染症で、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によれば、抗生物質を服用した患者がかかることが多い。

健康な腸には多くの細菌が生息している。その多くは安全で、なかには有益なものもある。しかし、抗生物質を服用すると、悪い細菌とともに良い細菌も殺されてしまう。そうなると、ディフィシル菌が腸を乗っ取り、腸粘膜にダメージを与えてしまうのだという。

抗生物質の追加服用による治療がうまくいかないときには、健康な便を移植すると、患者の消化管内の細菌バランスが回復する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国特別検察官、尹前大統領の拘束令状請求 職権乱用

ワールド

ダライ・ラマ、「一介の仏教僧」として使命に注力 9

ワールド

台湾鴻海、第2四半期売上高は過去最高 地政学的・為

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中