最新記事

英政治

次期イギリス首相を狙う11人の下馬評は

Who Will Replace Theresa May?

2019年6月15日(土)13時40分
ジョシュア・キーティング

【中道派】

■マイケル・ゴーブ(環境・食料・農村相)
▼オッズ:5倍

党内がブレグジット問題で大きく割れているなか、究極の妥協策としてゴーブが選ばれる可能性はある。キャメロン前首相の腹心として司法相兼大法官を務めた頃には、国民投票を前にしてジョンソンと並ぶ離脱派の急先鋒だった。しかし離脱派の多くに比べて「より穏健な」主張に早々と転じ、メイ内閣から離脱派の主要閣僚のほぼ全員が去っても居残った。

今は合意なき離脱を避けるために離脱期限を2020年まで延ばす用意があると語っているという。国民投票以前にイギリス在住だったEU市民には永住権取得の手数料を免除すると約束しているともいわれる。ドナルド・トランプ米大統領は先日の訪英時に、ジョンソンと並んでゴーブに会うことを望んだと伝えられる。

■ジェレミー・ハント(外相)
▼オッズ:8倍

国民投票時に残留派だった候補者のうち、恐らく首相になれるチャンスが最も大きい。

今は離脱に賛成し、強硬派や北アイルランドとスコットランドの指導者も加えて新しい交渉団を組織し、メイ案よりいい成果を生み出すと語る。合意なき離脱に賛成することは保守党にとって「政治的な自殺行為」だと述べたことがある。ただし、最後に必要となるなら「重い心で」支持するとも明かしている。

外相としてはイエメンの停戦協議に積極的に関わってきたが、イギリスからサウジアラビアへの武器売却は正しいと発言して非難を浴びた。

■サジド・ジャビド(内相)
▼オッズ:33倍

国民投票時には腰の引けた残留派だったが、今は離脱派と見なされている。何が何でも10月31日に離脱をと主張する陣営に属し、合意なき離脱への準備も呼び掛ける。パキスタン移民2世で、もし首相になれば非白人としては初となる。

当初は最有力候補に数えられたが、人気は下降気味。内相として、テロ組織ISIS(自称イスラム国)の戦闘員と結婚するためシリアへ渡った10代女性の市民権剝奪の決定を支持した。

刃物による殺傷事件の増加への対応策では、公衆衛生の問題として取り組む姿勢を打ち出す一方、警察によるストップ・アンド・フリスク(不審者を呼び止めて職務質問や所持品検査をする)の権限強化も支持した。

■マット・ハンコック(保健・社会福祉相)
▼オッズ:50倍

10月31日までの離脱を望むも、合意なき離脱には反対。EUとの包括的な自由貿易協定や、アイルランド国境問題の解決を目指す「アイルランド国境評議会」の設立など他候補に比べてやや詳細な計画を用意している。

英ガーディアン紙は「能力を有するように見え、おおむね普通の人に近いという、基本的な人徳の持ち主」と評した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計

ビジネス

ロ、エクソンの「サハリン1」権益売却期限を1年延長

ビジネス

NY外為市場=円が小幅上昇、介入に警戒感
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中