最新記事

ヘルス

WHO「ゲーム障害」は精神疾患と認定

World Health Organization Designations Gaming Addiction as a Disease

2019年5月29日(水)18時05分
ダニエル・モリッツラブソン

Kai Pfaffenbach-REUTERS

<ゲームのやり過ぎには精神疾患の可能性も、というWHOにゲーム業界が反発>

世界保健機関(WHO)は、「ゲーム障害」を精神疾患として正式に認定した。

WHOは5月25日、加盟国の投票により、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)」の第11回改訂版(ICD-11)を承認した。ICD-11では、「ゲーム障害」を疾患と定義している。発効は2022年1月からだ。

ICD-11によれば、ゲーム障害の特徴的な症状は、「ゲームをする時間や頻度を自分で制御できず、ほかの活動よりもゲームを優先させる程度が甚だしいこと」。そして、「ほかの関心や日常的な活動よりゲームが優先で、悪影響が生じていてもゲームを続ける、または増やす」状態だ。

WHOは、ゲーム障害は比較的まれな症状であると指摘し、「ゲーム障害になるのは、デジタルゲームやビデオゲームをする人のごく一部であることが、複数の研究で示唆されている」と書いている。

今回の認定は、ビデオゲーム業界からの反発を招きそうだ。WHOの動きに対し、ゲーム業界のロビー団体である「ビデオゲーム連合(Video Games Coalition)」は、ビデオゲーム製品には「教育的、治療的、娯楽的な価値」があり、「世界中で20億人を超える人々が安全に、かつ分別をもって楽しんでいる」と述べた、とNBCニュースは伝えている。

その一方で、WHOの採決に先立ち、ソニーの吉田憲一郎CEOは、「我々はこれ(ゲーム障害)を真剣に受け止め、対策をとる必要がある」と述べていた。具体的にどのような対策を考えているのかについては明らかにしなかった。

「病気ではない」という研究者も

アメリカ精神医学会(APA)はこれまで、ゲーム行動を依存症として分類することをためらってきた。APAは、研究はまだ継続中であり、ゲームを鬱や不安の徴候とすることの是非については、科学者たちが研究中だと言っている。

オックスフォード大学のオックスフォード・インターネット研究所で研究責任者を務めるアンドリュー・プシビルスキは2018年2月、「ゲーム障害を疾患と見なすWHOの試験的な動きは時期尚早だ」と書く。英ガーディアン紙に掲載された記事のなかでプシビルスキは、既存の研究には方法論的な誤りがあると指摘している。プシビルスキは以前にも、英国心理学会に研究の質についての懸念を表している。

エンターテイメントソフトウェア協会によれば、アメリカでは1億5000万人以上がビデオゲームをプレイしている。さらに、アメリカ人の60%は毎日ビデオゲームをプレイしていると同協会は述べている。

(翻訳:ガリレオ)


20190604cover-200.jpg
※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。


ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中