最新記事

中国メディア

中国はトランプ訪日をどう報道したか

2019年5月29日(水)19時00分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

二つの落とし穴の一つ目はトランプ大統領の次のツイートだとしている。

「われわれは日本との貿易交渉で大きな進展を得た。大部分は農産物と牛肉に関してだ。それ以外にも多くの内容に関して7月の選挙の後まで待たなければならないが、きっと大きな数値の成果がある」

このツイートには次の含意があるとCCTVネット新聞は解説している。

1.日米貿易交渉で(トランプは)大きな成果を得た。ということは、日本側は農産物と牛肉に関して大きな譲歩をしているということを意味する。トランプはとても喜んでいるが、安倍はおそらく焦っている。この二つは日本人がとても敏感に反応する領域なので日本が譲歩したということが分かれば、日本の農家は必ず安倍に責任を取れと迫ってくる。

2.日本のもっと多くの譲歩は7月の選挙の後にやってくる。安倍のために、「選挙後」と配慮しているようだが、トランプよ、こんなに正直に言ってしまっていいのかい?

CCTVネット新聞によれば二つ目の落とし穴はトランプの次のツイートだとのこと。

「数えきれないほどの日本の役人が私に教えてくれた。(アメリカの)民主党は、たとえアメリカが失敗するとしても、私と共和党が成功するのを見たくないようだと」

これはつまり、アメリカの内政に日本の政府関係者が(密告という形で)干渉しているということを明らかにしたことになり、「安倍を青ざめさせた」とCCTVネット新聞は解説し、「来年の大統領選で、もしトランプが勝利するんなら、まあ、いいが、万一にも民主党が勝ったら、その大統領に安倍は顔向けができるのだろうか」「安倍さん、お疲れ様!大変ですね」と感想を書いている。

トランプを責めても「安倍さん」を責めない中国

ニュアンスとしては、トランプ大統領に、「あなた、そんなこと言っていいの?」というトーンで、「安倍さんの苦境」を語っている。

「安倍さん、お疲れ様!」の「さん」は中国文字で日本語の発音への当て字である「桑(sang=さん)」を用いているから、相当の親しみ(?)を込めたことになろうか。皮肉も込めているかもしれないが、いつもの「安倍首相をヒトラーになぞらえるような攻撃」とは完全にトーンが異なる。

どちらかと言えば、ワシントンやニューヨークの報道の方が、よほど辛辣で、日本のメディアなどは「天皇陛下の政治利用」と書いているところさえあるので、よほど中国の方が批判的ではない。

なぜか――?

それは言うまでもなく、米中貿易戦争があり、おまけにHuaweiまでがターゲットになって禁輸策などが断行されようとしているため、何としても日米同盟のある日本をつなぎとめておきたいからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米韓制服組トップ、地域安保「複雑で不安定」 米長官

ワールド

マレーシア首相、1.42億ドルの磁石工場でレアアー

ワールド

インドネシア、9月輸出入が増加 ともに予想上回る

ワールド

インド製造業PMI、10月改定値は59.2に上昇 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中