最新記事

トルコ

リラ安止まらず2年で約半値 トルコに打開の一手はあるか?

2019年5月23日(木)17時50分

5月21日、トルコは、過去2年間で40%超も値下がりした通貨リラの下支えに苦戦し、リラ安が止まらずに市場からの信頼が失われ、対外支払い問題が深刻化するリスクに直面している。写真はリラ紙幣。イスタンブールで2018年8月撮影(2019年 ロイター/Murad Sezer)

トルコは、過去2年間で40%超も値下がりした通貨リラの下支えに苦戦し、リラ安が止まらずに市場からの信頼が失われ、対外支払い問題が深刻化するリスクに直面している。外貨準備が少ない中で、こうした流れを反転させるために同国が打ち出せる手段は何があるのか、投資家の間でも探る動きが続く。

もしトルコが全面的な危機に陥って国際金融資本市場から締め出されることになれば、他の方法で400億-900億ドルの資金を確保しないと、何らかの形でデフォルト(債務不履行)が起きる、とアナリストはみている。

外国投資家が想定したいくつかの今後のシナリオを以下に示す。

市場で時間稼ぎ

トルコの借り入れコストは跳ね上がっているとはいえ、まだ国際金融資本市場から出て行く必要があるほどの水準にはなっていない。債務の対国内総生産(GDP)比は年末までに約35%に上がる見込みだが、主要新興国の中ではまだ比較的低く、ある程度キャッシュを確保したり、目減りした外貨準備を補充できる。

政府は既に昨年10月以降、外貨建てで6回起債しており、総額は94億ドルに達した。今年については当初予定借入額80億ドルの8割が調達済みだ。

ただもっと資金が必要になるかもしれず、経済が非常に緊迫している局面での起債はコストが高くなり、将来の過重な返済負担が生じかねない。1月に発行した10年債(20億ドル)の利回りも7.68%と、1年前の2倍近くの水準だった。同債の足元の利回りは8%を上回っている。

債券資本市場バンカーやファンドマネジャーは、トルコが今から新たに起債する場合、40-60ベーシスポイント(bp)のプレミアムを乗せなければならないと見込む。

一方で返済コストは財政を一段と圧迫している。ムーディーズの試算では、トルコ政府の名目ベースの利払い費用は昨年30.4%、今年第1・四半期に約50%も増加した。リラ安と返済額自体が増えたことが原因だ。2017年に5.9%だった利払い費の歳入に占める割合は、8.2%前後まで高まると予想されている。

また市場での借り入れは対外赤字を幾分穴埋めしてくれるものの、トルコへのプレッシャーが高まれば、状況悪化に歯止めをかけるには力不足だろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済、26年第1四半期までに3─4%成長に回復へ

ビジネス

米民間企業、10月は週1.1万人超の雇用削減=AD

ワールド

米軍、南米に最新鋭空母を配備 ベネズエラとの緊張高

ワールド

トルコ軍用輸送機、ジョージアで墜落 乗員約20人の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中