最新記事

トルコ

リラ安止まらず2年で約半値 トルコに打開の一手はあるか?

2019年5月23日(木)17時50分

IMF

トルコは国際通貨基金(IMF)に支援を求めることができるが、エルドアン大統領はIMFとの取り決めに応じるのを強く拒否している。

過去50年間を見れば、トルコはさまざまな規模で20回近く、IMFから金融支援を受け、それと引き換えに引き締め政策を義務付けられてきた。直近では08年にIMFのプログラムを終了し、苦い記憶として残る。

それでもIMFほど強力で、信頼できるチェック機能を有し、外国投資家に関与しても大丈夫だと安心感を与えてくれる存在はほとんど見当たらない。

ムーディーズのソブリン・リスク・マネジングディレクター、イブ・レメイ氏は、エルドアン氏がIMFを避けようとすれば、経済立て直しは簡単にはいかないし、立て直せないと警告する。

ウニクレディトは今年後半にIMFとの合意がまとまると予想し、ブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者も、IMFが救済に乗り出す確率は高まってきているとの見方を示した。

友好国からの援助

ペルシャ湾岸諸国のうちトルコと最も緊密なのはカタールだ。昨年夏のトルコ通貨危機後に、カタールはリラ支援のための30億ドルの通貨スワップを含めた総額150億ドルの経済支援をすると表明してくれた。

ところが複数の関係者の話では、実際にはトルコとカタールの協議は進展しておらず、トルコが最近になって再び資金面の問題が出てきてから、カタールは支援を一切公式に発表していない。

他の湾岸諸国からの援助はおぼつかない。17年にサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)がカタールへの制裁を開始した際、トルコはカタール側についたからだ。

一部では、トルコの危機が貿易や銀行を経由して伝播するのを避けたい欧州連合(EU)諸国が個別に、あるいはEUとして手を差し伸べるのではないかとの観測が浮上している。もっともギリシャ支援のように欧州が大々的に関与する際にはIMFのプログラムと連動しているし、欧州がトルコに大規模な金融支援をする政治的な機運も乏しい。

そうなると残るはロシアと中国で、両国とも「新開発銀行(BRICS銀行)」のメンバーだ。しかし同行には授権資本が1000億ドルしかなく、あくまで融資はインフラ整備が目的で、危機支援ではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=まちまち、FOMC受け

ビジネス

ドル一時153.00円まで4円超下落、現在154円

ビジネス

FRB、金利据え置き インフレ巡る「進展の欠如」指

ビジネス

NY外為市場=ドル一時153円台に急落、介入観測が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中