最新記事

アメリカ社会

アベンジャーズ大ヒットを支えたもう一つの要因 「薬物使用俳優」に寛容な米国社会

2019年5月8日(水)11時40分
猿渡 由紀(L.A.在住映画ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

ロバート・ダウニー・Jrが2009年ハリウッドのチャイニーズ・シアターで手形をつけるセレモニーに母親とともに出席。この数年前までは薬物依存症に苦しめられていた。 Fred Prouser - REUTERS

ピエール瀧のコカイン所持逮捕事件が、波紋を呼び続けている。CMの放映は中止され、大河ドラマも別の役者で再撮影されるとのこと。それらをめぐって損害賠償はどうなるのかという話題も聞く。

言うまでもなく、悲しいかなハリウッドは、違法ドラッグがらみのトラブルに関して経験豊かなベテランだ。有名スターがこのような事件で逮捕された場合、アメリカではどれくらいの騒ぎになるのか?

「キャリアが終わる」ことはない

答えを先に言うなら、ほとんど騒がれない。過剰摂取(OD)で命を落とした、あるいは落としそうになったとなれば、もちろん大ニュースだ。だが、逮捕されただけならば、誰も大して驚かないというのが、実際のところなのである。

薬物使用でキャリアが落ち目になったスターも、もちろんいる。しかし、それは逮捕のせいで映画やテレビから締め出されたというより、依存症の影響で職場に迷惑をかけた結果である。遅刻や無断欠勤をする、セリフを覚えてこない、などだ。

そんな人を雇うと振り回されて大変だし、何しろ保険会社が嫌う。ハリウッドでは映画の製作プロジェクトごとに保険に入るのだが、キャストにこういう人物がいると、保険代が桁外れに高くなるのだ。

「アベンジャーズ」「アイアンマン」シリーズでおなじみのロバート・ダウニー・Jr.は、過去に薬物がらみで服役し、出所してきた後、ウディ・アレンから出演をオファーされるも、出演にあたっての高額な保険代が理由で最終的に断られた。

彼の場合は、親しい友人メル・ギブソンが、「保険代は自分の懐から出す」と、自らプロデューサーも兼任する映画『The Singing Detective(日本未公開)』に出させてくれたおかげで、復活の機会を与えられている。リンジー・ローハンも、保険が高くなりすぎて「事実上雇えない人」のハンコを押された1人だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏の昨年資産報告書、暗号資産などで6億ドル

ワールド

イラン、イスラエルとの停戦交渉拒否 仲介国に表明=

ワールド

G7、中東情勢が最重要議題に 緊張緩和求める共同声

ワールド

トランプ氏、イスラエルのハメネイ師殺害計画を却下=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中