最新記事

選挙

インドネシア大統領選、22日結果発表 デモのほかテロ計画も発覚で厳戒態勢へ

2019年5月15日(水)19時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

開票作業従事者が多数死亡

4月17日行われた大統領選挙は同時に国会議員、地方議員なども選ぶ選挙が行われた。インドネシアの選挙は識字率が低かった時代の名残で候補者の名前・写真の部分に釘で穴を開ける、という方法で投票するため、開票作業はこの穴の位置を確認するため手間のかかる作業になる。そもそも全国8万カ所あるという投票所のなかにはバイクや船で地域の開票所に運ぶところもあるため、開票が始まるまでに時間がかかっている。

そんななか、これまでに開票作業に従事していた選挙監視庁職員や立会人、警備の警察官など約400人が過労などで死亡する事態になっている。政府は犠牲者に見舞金を配布するとともに、複数選挙の同日実施という今回の方法を再検討する方針を明らかにしている。

こうした事態についてプラボウォ陣営は「投票結果や投票用紙を操作してジョコ・ウィドド大統領に有利な不正をするために過剰な労力と神経を使ったことが過労死の原因である」と指摘し、不正選挙を裏付ける証左と主張する事態になっている。

これに対し、過労で倒れた選挙関係者の遺族などからは「不正には一切関与していないと信じている」と反発が続出。なりふり構わないプラボウォ陣営の方針に「潔くない」「負け惜しみだけ」との批判が高まっていることも事実である。

前回2014年の大統領選でも苦杯をなめたプラボウォ氏は開票結果の不正を憲法裁判所に訴えたものの却下された経緯があり、今回も同様の手法をとるといわれている。

しかし、同氏周辺や熱狂的な支持者は街頭デモや集会での「直接行動」をフィリピンでマルコス大統領を打倒した例にならい「ピープルパワー」として大衆動員作戦を始めている。

「大統領を斬首」発言で逮捕者も

こうしたプラボウォ陣営の動きに呼応するかのようにイスラム穏健派やキリスト教徒、仏教徒への憎悪をむき出しにして軋轢を繰り返しているイスラム教急進派の「イスラム擁護戦線(FPI)」などが開票作業を続ける選管やその監督に当たる選挙監視庁を糾弾する集会やデモ行進を繰り返す「直接行動」に出始めた。

そんななか、5月10日に選挙監視庁前で行われたプラボウォ陣営支持、選挙不正追及デモである男が「ジョコ・ウィドド大統領の首を切る用意はできている」と発言。その動画が拡散され、警察がこの男を「国家転覆容疑」と「情報電子取引法違反容疑」で逮捕する事件まで起きている。

これまでジョコ・ウィドド大統領への批判は野党支持層から少なからずあったが、「大統領の斬首」を公言した例はなく、急進派の間で「プラボウォ支持」の裏返しで「大統領への怨嗟、嫌悪」の機運が高まっているとの懸念が広がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独ポルシェ、傘下セルフォースでのバッテリー製造計画

ビジネス

米テスラ、自動運転死傷事故で6000万ドルの和解案

ビジネス

企業向けサービス価格7月は+2.9%に減速 24年

ワールド

豪首相、イラン大使の国外追放発表 反ユダヤ主義事件
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中