最新記事

選挙

インドネシア大統領選、22日結果発表 デモのほかテロ計画も発覚で厳戒態勢へ

2019年5月15日(水)19時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

開票所で実際に確認された投票用紙。小さな穴が空いている左側のジョコ・ウィドド大統領が一票獲得。 Willy Kuniawan / REUTERS

<1万を超える大小さまざまな島に住む2億3千人以上の国民が直接大統領を選ぶインドネシア。投票から約1カ月、開票結果が間もなく明らかに──>

4月17日に投票されたインドネシア大統領選挙は、出口調査などでは現職のジョコ・ウィドド大統領が再選確実と言われているが、実は今も開票作業が続いている。選挙管理委員会(KPU)は正式の投票結果を5月22日に発表する予定で現在も開票作業を続けている。開票結果の正式発表のタイミングに合わせて現職のジョコ・ウィドド大統領に挑戦して敗北が確実視されているプラボウォ・スビアント氏を支持するイスラム急進派などが「選挙は不正」としてその結果に関わらず大衆動員型のデモや抗議集会を予定している。

一方で最近国家警察が摘発したイスラム教テロ組織の捜査から5月22日前後に爆弾テロが計画されていたことが判明。国軍、警察などの治安当局は厳戒態勢を敷く方針を明らかにしている。

インドネシアは現在5月6日から約1カ月続くイスラム教の「ラマダン(断食)」の最中で、人口の約88%を占めるイスラム教徒は慎みのある生活と敬虔な祈りの日々を送っているものの、首都ジャカルタを中心に22日に向けて社会の緊張が次第に高まっている。

開票作業不正を指摘して疑念拡大作戦

選管による正式の開票状況は刻一刻とテレビなどを通じて報じられており、5月15日午前の開票率約83%の段階で現職のジョコ・ウィドド大統領が56.23%を獲得。対抗馬プラボウォ候補の43.77%に約13%の差をつけてリードし、再選続投は確実となっている。

投票直後から民間の複数の調査機関が公表した開票速報値ではジョコ・ウィドド大統領の優勢が伝えられたが、両陣営とも「選管の正式な最終開票結果を待とう」との姿勢を示していた。

ところがその直後からプラボウォ陣営は「独自の開票結果では60%を獲得して勝利している」として一方的に勝利宣言するとともに次期プラボウォ内閣の閣僚まで指名する事態になった。

こうした状況にジョコ・ウィドド大統領陣営からは「プラボウォ氏大統領就任おめでとう、でもあなたの任期は5月22日の選管の結果発表までだ」(ネット上のSNS)と揶揄する声が出ているものの、全体としては冷静に対応、事態の推移を見守っている。

さらに選管による開票の進捗で敗色が極めて濃厚となるに従い、プラボウォ陣営は選管に対して「開票作業で不正がある」と抗議したのに続き、「報道が中立を欠いている」と矛先を内外のマスコミに向けるなど、あらゆる方策で選挙結果への疑念を掻き立てる手段に出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小反発、クリスマスで薄商い 値幅1

ビジネス

米当局が欠陥調査、テスラ「モデル3」の緊急ドアロッ

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める

ワールド

24年の羽田衝突事故、運輸安全委が異例の2回目経過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中