最新記事

インドネシア

違法操業の外国漁船は沈没させよ インドネシア強硬派大臣は「女ゴルゴ13」

2019年5月13日(月)18時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

違法操業して拿捕された外国漁船が海水を注入され沈没させられた metrotvnews / YouTube

<海洋資源に恵まれた国ならどの国でも頭を悩ませるのが外国漁船による違法操業。これに敢然として立ち向かい、拿捕した船の沈没を命じた大臣は「女ゴルゴ13」の異名をもつ>

インドネシアの排他的経済水域で許可なく違法に操業する外国籍漁船などへの厳しい対応を続けているインドネシア政府は5月に入ってから拿捕した外国漁船の処分を再開した。これまでは漁船を砲撃や爆弾などで爆破という派手な方法で処分していたが、今回は海水注入による水没というより穏やかな方法を採用している。拿捕した違法操業後船の処分は約8カ月ぶりとなる。

スシ・プジアストゥティ海洋水産相が5月4日に政府関連行事で訪問したカリマンタン島ポンティアナックで、51隻の違法操業漁船を国内の5か所で海上保安機構(日本の海上保安庁にあたる)などによって水没処分させたことを明らかにした。インドネシアのアンタラ通信が伝えた。

インドネシア当局によると38隻のベトナム船籍の漁船を含めた51隻が今回の処分対象となっており、ベトナム以外にマレーシア、中国、フィリピンなどの漁船が含まれているという。

こうした漁船は南シナ海南方のインドネシア領ナツナ諸島周辺海域でカツオ、マグロ、カジキなどを無許可で獲っている。インドネシア海上保安当局や海軍の艦艇によって違法操業中に拿捕された漁船は、乗組員を拘留した後に安全を確保して漁船を処分しており、人的被害は発生していない。

今回注水によって水没させる方法を選んだ背景には、爆破による環境汚染を避け、なおかつ沈没させた船が海底で漁礁となることなどに配慮したものとみられている。

強硬姿勢に閣内からも反論

スシ海洋水産相は「我々はインドネシアの海で行われている違法操業をストップさせるためにこうした処分を実施している。我々の海洋資源、海産物はインドネシア国民のものであり、外国人のためのものではない」と述べて、処分の正当性と違法操業の根絶を訴えた。

インドネシアは2014年のジョコ・ウィドド政権誕生以来、領海や排他的経済水域の警備警戒、権益保護に特に力を入れており、スシ海洋水産相はこれまでもたびたび拿捕した外国籍漁船を当該国の返還要求にも関わらず爆破処分するなどの強硬な姿勢を示してきた。海洋水産省によると2014年10月以来処分した違法操業外国漁船は約500艘に上るという。

こうした厳しい姿勢に内閣の一部から反対論がでたこともあった。2018年1月には海洋水産省や運輸、観光などを統括するルフト・パンジャイタン海事担当調整相と一部国会議員から「すでに十分である」「強硬姿勢は不要だ」などと反対する声が出た。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中