最新記事

フィリピン

比ドゥテルテ大統領、メディアと対立激化 一族の資産を巡る疑惑報道に敵意むき出し

2019年4月16日(火)18時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

メディアへ敵意をむき出しにするフィリピンのドゥテルテ大統領 Erik De Castro / REUTERS

<権力の座にある者と報道機関の対立はどの国でもあることだが、現在のフィリピンはそれがエスカレートし異常ともいえる状況になりつつある>

フィリピンのドゥテルテ大統領とメディアの関係が悪化している。ジャーナリスト団体が、ドゥテルテ大統領とその親族の資産が2016年6月の就任以来、急増していることを明らかにし、それに関連して元最高裁長官らがドゥテルテ大統領に「説明責任」を求める事態になっているのだ。

これに対しドゥテルテ大統領は「政治家としての収入以外について批判を受ける筋合いはない」と説明を事実上拒否するとともに、批判的なメディアに対し「仕返しする」などと敵対する姿勢を強調。5月の中間選挙に向けて大統領とメディアの間の緊張が高まりつつある。

最近の世論調査でも国民のドゥテルテ大統領と政権に対する支持率は79%と依然として高止まりしており、こうした支持率の高さを背景にドゥテルテ大統領は相変わらず強気の姿勢で、これまで同様に麻薬関連犯罪への厳しい姿勢、反大統領派への反撃などの政策を継続すると同時に、大統領に批判的なメディアへの締め付けをさらに強化しようとしている。

フィリピンのジャーナリスト団体「調査報道センター」が4月4日に明らかにした報告によると、ドゥテルテ大統領とその一族の資産が、大統領就任以来増加している実態が報告されている。

具体的には大統領に就任した2016年6月のドゥテルテ大統領の資産が2,408万ペソ(約5,200万円)だったのに対し2017年には2,854万ペソ(約6,174万円)に増加、娘のミンダナオ島ダバオのサラ・ドゥテルテ市長は2016年6月の3,490万ペソ(約7,550万円)から2017年には4,480万ペソ(約9,692万円)、長男の元ダバオ副市長パオロ・ドゥテルテ氏は同じ時期に1,984万ペソ(約4,292万円)から2,774万ペソ(約6,000万円)にそれぞれ増加している。

ドゥテルテ大統領自身と娘のサラ市長はそれぞれ弁護士事務所を経営しており、その収入を資産報告書に記載しておらず、公表されている資産に加えて隠し財産があると指摘されている。

さらにサラ市長が夫と共同で経営する弁護士事務所は証券取引委員会に未登録であり、顧客の中に関税局と取引がある仲介業者が存在することも同センターの調査で明らかになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中