最新記事

事件

ピエール瀧とK-POPアイドルBIGBANG V.Iに見る芸能人スキャンダルの自粛問題

2019年4月4日(木)20時11分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

K-POPアイドルとして世界的に人気の高いBIGBANG。一連の事件で脱退したV.I(左)を除くメンバーは兵役についており活動休止中だ。Bobby Yip - REUTERS

<罪を犯した芸能人本人の謹慎は当然としても、その作品を回収したり公開停止するのは本当に必要なことなのか?>

3月13日、タレントで俳優のピエール瀧が麻薬取締法違反容疑で逮捕されたことを受け、所属レコード会社ソニーミュージックレーベルズは商品の出会停止と店頭在庫の回収、デジタル配信の停止を発表した。これに対し、ファンからの抗議や非難が殺到しているという。主な意見としては、「音楽作品に罪はない」「本人が更生して戻ってくることを信じている」というものが多いようだ。

今までにも芸能人の不祥事や麻薬違法問題は数多く取り上げられてきた。今回のピエール瀧容疑者と、2月に強制性交容疑で逮捕された俳優の新井浩文容疑者。今年に入って続いたこの二人の事件によって芸能人の不祥事と作品の自粛問題が浮き彫りになっている。奇しくも二人ともに出演作の多い人気俳優だったこともあり、逮捕後相次いで作品の自粛が始まった。しかし、この騒動には過剰反応だという非難の声もあがっている。

自粛で差し替えた映画にも問題が

一例をあげるとNHK BSプレミアムは、放送予定だったピエール瀧の出演作映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』『ALWAYS 三丁目の夕日'64』をインディージョーンズシリーズに差し替え放送をした。ところが、差し替えで放送された『インディ・ジョーンズ最後の聖戦』にはリバー・フェニックスが出演しているが、彼は1993年に薬物乱用で死亡している。自粛ムードが逆にあだとなってしまったようで、ネットでこの対応を揶揄する意見も出ていた。

一方では4月5日公開の映画『麻雀放浪記2020』(東映)は、ピエール瀧の出演部分をノーカットで上映することを決定した。発表後、配給の東映の株価が上がったという事実もある。関係者は過敏に自粛しようとしているが、一般世論は行き過ぎた自粛ムードにうんざりしているのかもしれない。

もちろん出演者が加害者だった場合、被害者の気持ちを考えなくてはならないが、観客は作り手が思っている以上に、役者本人と作品とは別物だと切り離して考えているようだ。過去に薬物乱用が問題となったミュージシャンや芸能人は多い。これまでの例をみても、見事更生し芸能界に戻ってきた人もたくさんいるし、かつてはここまで自粛ムードも厳しくなかったようにみえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感、12月は予想下回る 雇用・所得

ワールド

トランプ氏「同意しない者はFRB議長にせず」、就任

ワールド

イスラエルのガザ再入植計画、国防相が示唆後に否定

ワールド

トランプ政権、亡命申請無効化を模索 「第三国送還可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中