最新記事

再生

「頭の再生能力を最近進化させたヒモムシが存在する」

2019年3月11日(月)18時30分
松岡由希子

切断された頭を再生する能力が備わっていたヒモムシ Credit: Terra C. Hiebert

<このほど、進化史上、最近進化した4種のヒモムシに、切断された頭を再生する能力が備わっていることが明らかとなった>

すべての動物には、ある程度の再生能力が備わっている。ヒトでさえ、皮膚が再生し、やがて傷を覆う。サンショウウオやクモのように切断された付属器官を再生するものや、わずかな組織から個体全体を再生するヒモムシのような種も存在する。従来、再生能力は、進化を通してその多くの種で失われ、一部の種のみが保持し得る古代の特性であると考えられてきた。

海綿動物やヒドロ虫、有櫛動物など、進化史の極めて早い時期に分岐した種には個体全体を再生する能力が備わっているが、より複雑に進化するにつれて再生能力は小さくなっていくというわけだ。しかしこのほど、進化史上、最近進化した4種のヒモムシに、切断された頭を再生する能力が備わっていることが明らかとなった。

頭の再生能力を進化させた種が見つかった

米メリーランド大学を中心とする国際研究チームは、2012年から2014年にかけて米国、アルゼンチン、スペイン、ニュージーランドで22種のヒモムシを採集し、2016年の研究で採り上げた13種を加えた35種を対象に、頭と尾の再生能力について調査した。

2019年3月6日に英学術雑誌「王立協会紀要」で公開された研究論文によると、対象となるすべての種に尾の再生能力があったが、脳を含めた頭全体を再生する能力を持つものはわずか8種であった。また、そのうちの少なくとも4種は、それぞれ独立して頭の再生能力を進化させたとみられ、なかには、進化史では比較的最近の1000万年前から1500万年前に進化したものもあった。

比較的最近に進化したものが認められた

従来の考え方によれば、再生能力は共通祖先から伝わり、種が分岐していくにつれて失われていくはずだ。しかし、研究チームが頭と尾の再生における進化パターンを改めて整理したところ、比較的最近に進化したものが認められたという。

研究チームの一員でもあるメリーランド大学のアレクサンドラ・ベールイ准教授は、この研究成果をふまえ、「動物群を比較する際、その古さや共通祖先から再生能力が類似していると決めつけることはできない」とし、「動物群をまたいで再生能力を比較する際にはより注意が必要だ」と述べている。

新たな再生能力の発現を研究するうえで優れたモデルになる

再生能力の変化が進化史のいつどこで起こったのかを評価することは、再生能力がどのように進化し、どのような要素が影響を与えているのかを知るうえで重要だ。

従来の研究では、再生能力が失われた動物種をベースに、再生能力がどのように進化してきたのかが解明されてきた。この研究成果の意義について、ベールイ准教授は「比較的最近、頭の再生能力を進化させたこれら4種のヒモムシは、動物における新たな再生能力の発現を研究するうえで優れたモデルになるだろう」と評価している。

MAGAZINE

特集:5Gの世界

2019-3・26号(3/19発売)

超高速大容量の通信でネット利用が快適に...... どころで済まない5Gの潜在力と激変する未来の姿

人気ランキング

  • 1

    日本の重要性を見失った韓国

  • 2

    韓国のPM2.5が危機的状況で、比較的空気の綺麗な日本に注目が集まる

  • 3

    500年間誰も気づかなかったダビデ像の「目の秘密」【名画の謎を解く】

  • 4

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

  • 5

    北斎は幽霊っぽさを出すために子供の頭蓋骨を使った…

  • 6

    日本よ!「反韓・嫌韓」は時間の無駄だ

  • 7

    モデルの乳がんを、レンブラントは意図せず描いた【…

  • 8

    人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕…

  • 9

    自殺者数、米軍兵力、初任給... 韓国のリアルを10の…

  • 10

    「韓国にまともな民主主義はない」アメリカも抱く誤…

  • 1

    日本の重要性を見失った韓国

  • 2

    韓国のPM2.5が危機的状況で、比較的空気の綺麗な日本に注目が集まる

  • 3

    モデルの乳がんを、レンブラントは意図せず描いた【名画の謎を解く】

  • 4

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 5

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう…

  • 6

    500年間誰も気づかなかったダビデ像の「目の秘密」【…

  • 7

    謎のシャチが見つかった?未知の4種目の可能性

  • 8

    自殺者数、米軍兵力、初任給... 韓国のリアルを10の…

  • 9

    韓国カフェ:ゴミ対策で使い捨てカップ禁止にしたら…

  • 10

    性転換外科医が患者の性器写真を綿々とインスタに投…

  • 1

    日本の重要性を見失った韓国

  • 2

    フィンランドで隠し撮りされた「怪物」の悲劇

  • 3

    家畜のブタが人食いブタに豹変──ロシア

  • 4

    映画『ボヘミアン・ラプソディ』が語らなかったフレ…

  • 5

    『ボヘミアン・ラプソディ』を陰で支えた、クイーン…

  • 6

    自殺者数、米軍兵力、初任給... 韓国のリアルを10の…

  • 7

    【動画】子犬の「返品」を断られて激高し、殺してし…

  • 8

    【動画】サメを虐待した金持ち息子に軽すぎる刑

  • 9

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 10

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
NWデジタル編集部ほか求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月