最新記事

キャリア

平成最後の就活で崩壊する「嘘」と、大人が知らない新常識

2019年3月7日(木)17時55分
北野唯我

平成の終わりとともに始まる「就活の民主化」

ひとつ目のキーワードは「多様化」。これまでの仕事選びは「一瞬で一生の会社を選ぶのが普通」だった。学生は短期間の間で、一生勤める会社を選ばなければならなかった。だが、いまは、欧米の企業の多くが実施しているように、通年採用を導入する日系企業も少しずつだが増えつつある。

あるいは、厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」調査で、大卒者の3割が入社から3年以内に離職すると報告されていることから、逆を言えば7割が、転職していると読み取ることができる。新卒で入社した会社に一生を左右されるという認識は若年層で薄れているし、現に中途市場の活況化にも表れている。

次に「民主化」。リクナビ、マイナビでは手つかずの、世間的には「言いにくい」情報が表面に出てきている。このトレンドは就活に限ったことではなく、この10年のうちに、外食産業にクチコミサイトが浸透したように、他業界で実際に起こっている。企業の広告情報ではなく、「本当のことが知りたい」というユーザーの思いが支持される、というのは就活でも同じだろう。

【関連記事】逃げ切りたい中高年は認めたくない? ミレニアル世代が高給でも仕事を辞める理由

syukatsu-henka-onecarrer-chart01.jpg


One carrer Inc.

最後に就活生側の前提条件による不利益の撤廃だ。言うなれば、「分散化」。例えば首都圏の旧帝大や難関私立大学は圧倒的に学生の情報量が違う。大企業の本社機能が集中するのは言わずもがな、東京であり、説明会の回数も地方に比べ圧倒的に多い。

一方で、地方の就活生は物理的にも、前提条件から不利な状況に置かれている。自分の志望する企業に入社したOB・OGに辿り着くのだって難しいし、面接や説明会でひとたび東京に出ようと思えば、交通費や滞在費は馬鹿にならない。これからは、そもそも選考の前に横たわる「就活格差」の是正が本格化し、一極集中→地方や学歴を問わない就活が台頭してくる。

【関連記事】米国で早期リタイアを目指すミニマリストの若者が増えている理由:FIRE運動の背景を探る

実はこれらの新常識は、大学のキャリアセンターの人でも一部の熱心な方を除いては、まだまだ知られていない。リクナビ、マイナビといった旧来のナビサイトとしては、自社と利益相反になるので触れづらい部分でもあるため、大々的な周知やサービス変更は手つかずのまま、というのが実態である。

サービスや仕組みにおいて、ブラックボックス化されている部分こそが、ユーザーファーストの観点から本当に大切なこと。新卒採用サービスも、そこを明らかにして、就活生に判断を委ねればいい。だが、現在の就活システムから滲み出るのは、企業の都合、世間の建前によって作られた「一般常識と見せかけた嘘」が少なくない。親たちが知らないところで、子供は「嘘」の中で人生を賭けて闘っていることを理解していただければ幸いだ。


yuiga-kitano-nw-prof01.jpg[執筆者]
北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。新卒で博報堂、ボストンコンサルティンググループを経験し、2016年ワンキャリアに参画、最高戦略責任者。1987年生。デビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)は12万部11万部 。2作目『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)は発売1カ月で6万部を突破中。レントヘッド代表取締役も兼務。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見...「ペットとの温かい絆」とは言えない事情が
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 6
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 7
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中