最新記事

ブレグジット

イギリス議会、離脱案3度目の否決 EU「合意なき公算大」

2019年3月30日(土)10時02分

英議会は欧州連合(EU)離脱協定案の主要部分を巡る採決を行い、286対344で否決した。否決を受け、EUのトゥスク大統領は4月10日にEU首脳会議を開くことを明らかにした。写真は同日、議会で演説するメイ首相(2019年 ロイター)

英議会は29日、欧州連合(EU)離脱協定案の主要部分を巡る採決を行い、賛成286票、反対344票の反対多数で否決した。結果を受け、欧州委員会は4月12日に合意なき離脱に突入する公算が大きくなったとの認識を示した。

EU首脳は、メイ英首相がEUと合意した離脱協定案が英議会で承認されない場合、4月12日まで離脱日を2週間延期し、それまでに新たな計画を示すか、合意なき離脱を選ぶか決断するよう求めている。[nL3N21848Q]欧州委報道官は「EUは4月12日の合意なき離脱シナリオへの準備を完全に整えた」と説明した。

メイ首相は、議会の採決結果について「重大な影響」を及ぼすとして、選択肢がなくなりつつあるとの考えを表明。「議会は合意なき離脱を否決し、離脱撤回も拒否した。27日には議題に上がるすべての選択肢の受け入れを拒み、今日は離脱協定案単体の承認と、将来に関するプロセス継続も拒否した」と指摘した。

その上で「下院での手続きはもはや限界に達したと言わざるを得ない。下院の決定が意味するものは重大だ」と語った。

また「法的には、英国はEUを4月12日に離脱する」と表明。それ以降に延期する場合は長期的な延期となる公算が大きく、その場合に英国は5月の欧州議会選挙に参加する必要があるとの見方を示した。

メイ首相の離脱協定案が議会で否決されるのはこれで3回目。可決されていれば離脱期日の5月22日までの延期に道が開かれていた。

再び否決されたことで、離脱時期だけでなく、実際に離脱するのかを含め一段と混迷が深まり、外国為替市場で英ポンド一時は対ドルで1.2977ドルと、約0.5%下落。ただその後は回復した。

メイ首相の広報官は反対派らとの協議継続を確認した。一部関係者によると、今後何らかの代替案が議会に上がった時点で、メイ氏の離脱協定案が対案として再度投票にかけられる可能性は残るという。

グレイリング運輸相はスカイニュースに対し「ここまで来たら総選挙をして国民に信を問うしかない」とした上で「ブレグジットの手続きを整理する必要がある。われわれは何もかも放り出すわけにはいかない」と述べた。

否決を受け、EUのトゥスク大統領は4月10日にEU首脳会議を開くことを明らかにした。

EU首脳からは合意なき離脱の可能性が高まったとの見解の表明が相次いだ。フランスのマクロン大統領は、EUは合意なき離脱に向けた対応を加速させる必要があると指摘。オーストリアのクルツ首相は、英国が代替案を提示しない限り「ハードブレグジット」が現実になるとの見方を示した。

このほか、オランダのルッテ首相は記者団に対し、「秩序立ったEU離脱に向け残されていた2つの道のうち1つが閉じられた」とし、「残されたもう1つの道は英国が4月12日までに意向を明確に示すことだが、合意なき離脱のリスクは極めて高くなっている」と述べた。

[ロンドン/ブリュッセル 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

9月ショッピングセンター売上高は前年比1.4%増=

ワールド

中国主席、APEC会議出席のため30日─11月1日

ビジネス

低利回りの超長期債入れ替え継続、国債残高は9年ぶり

ワールド

英インフレ期待、10月は4月以来の高水準=シティ・
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 10
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中