最新記事

日本経済

「毎月勤労統計」、適正試算すると実質賃金は2年連続マイナスに 消費増税にも影響か

2019年2月1日(金)18時30分

厚生労働省が不適切な調査を行ってきた毎月勤労統計で、適切処理して再集計したデータを基にロイターが試算したところ、2018年1月─11月の実質賃金の水準(定例給与)は、前年比マイナス0.4%だった。写真は都内で2011年8月撮影(2019年 ロイター/Yuriko Nakao)

厚生労働省が不適切な調査を行ってきた毎月勤労統計で、適切処理して再集計したデータを基にロイターが試算したところ、2018年1月─11月の実質賃金の水準(定例給与)は、前年比マイナス0.4%だった。

同省が昨年までの不適切調査で公表してきた同マイナス0.1%から減少幅が拡大している。個人消費の拡大の起点となる実質賃金の下押しは、政府の政策判断や市場の見通しにも大きな影響を与える可能性が出てきている。

実質賃金、定例給与では2年連続実質でマイナスの可能性

「今回の再集計でそれほど大きな影響は受けておらず、これまでの賃金動向の判断に影響はない」──。西村康稔官房副長官は1日の会見で、前日に続いてこう強調した。

しかし同副長官が指摘した再集計とは18年1月に実施された、サンプル入れ替えの影響を勘案しない賃金の再集計値のみ。

サンプル入れ替えによる段差を取り除き、かつ同じ事業所で比較した実質賃金が公表されれば賃金の実態が把握しやすいと、この問題を追及して政府・与党側と対峙している野党側は指摘する。

複数の関係筋によると、厚労省は4日以降にこの数字を公表する見通しだ。

ロイターは、同省が公表し、データ入手が可能な「サンプル入れ替えを勘案しないベース」での実質賃金の再集計値を使用し試算を行った。給与実態を最も典型的に反映しているとエコノミストの多くが認識している「毎月受け取る定例給与」を対象に実質賃金をはじき出した。

その結果、18年1月─11月の実質賃金は前年同期比マイナス0.4%となった。同省が昨年まで公表していた値を基に試算した同マイナス0.1%と比較すると減少幅は拡大した。

17年の同マイナス0.1%からもさらに落ち込んでいることがわかった。

低い賃上げ率、背景に日本経済への将来不安

物価の伸びにさえ追い付けないような鈍い賃金の伸びは、毎年の賃上げが少ないことにも一因がありそうだ。

安倍晋三首相はこの問題を追及される度に、アベノミクスにより春闘でのベースアップが復活しボーナスも過去最高だったと強調している。

しかし、連合集計でみると最近の2%前後の賃上げ率のうち、定期昇給分を除く賃金底上げ分は18年春闘で0.5%程度。これは名目賃金であり、18年物価上昇(生鮮食品を除くベース)で0.9%の上昇を差し引くとマイナスとなる。

東京大学大学院の柳川範之教授はこうした状況について「本来、企業がベアをもっと上げていれば、将来の絵も変わっていたはずだ。所得と消費と企業部門の好循環が実現していたはず」とみている。

一方で「家計だけでなく企業も、将来不安が大きいことに問題がある。企業も賃上げにも慎重にならざるを得ない」と指摘する。企業を責めるより、社会全体が日本経済の先行き不安を感じる現状を改革に注力すべきとの見解を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ米大統領、次期FRB議長にウォーシュ元理事

ワールド

シリア暫定政府、クルド勢力と停戦合意 統合プロセス

ビジネス

英住宅ローン承認件数、12月は24年6月以来の低水

ビジネス

ユーロ圏GDP、第4四半期は前期比0.3%増 予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 6
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 7
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 8
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 9
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 10
    配達ライダーを飲み込んだ深さ20メートルの穴 日本…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 8
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 9
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中