最新記事

労働

年間100万円、メイドさんを雇って得た「気づき」 高い?安い? 主婦の仕事に比べたら......

2019年2月4日(月)20時00分
中野円佳 (ジャーナリスト ) *東洋経済オンラインからの転載

そのほかに彼女の食費、シャンプーなどの日用品など生活関連費、医療費を負担。通常は2年経過して契約期間終了時に帰省させてあげるための飛行機代を負担する必要があるが、本人の「家族とクリスマスを過ごしたい」という希望を尊重し、5カ月目には有給で2週間フィリピンへの帰国を認め、飛行機代をこちらで支払った。

月500シンガポールドル(4万円)台で雇うケースもあり、帰国なども認めなければ年間の費用はもっと抑えられるが、わが家の場合は1年間で100万円強をヘルパー費用として支出することになり、その分自分もしっかり稼がなきゃという気分にさせられた。

メイドさん側に入る収入や時給を考えれば安すぎると思う人もいるかもしれないが、母国で同じ仕事をする場合に比べると倍程度稼げるという。また、住居費などがかからず、彼女たちは月収がほぼ可処分所得になる。母国の家族に送金したり、将来のために貯蓄や勉強する費用に充てる人もいるが、シンガポール内で日曜日にオシャレをしたり、メイド仲間と遊ぶのに使っている人もいて、一概にグローバルな経済格差によって「搾取されている労働者」というわけではない。

住み込みメイドにまつわる論点

こうしたメイドの仕組みだが、倫理的にどうなのかという点での議論もある。シンガポールの場合はコンドミニアムの間取りでキッチン脇にヘルパーが滞在できる小部屋があることが多いが、多くの住み込みメイドの住環境は良いとは言えず、プライバシーは守られにくい。

Rhacel Salazar Parreñas,2015 "Servants of Globalization : Migration and Domestic Work, Second Edition"によれば、カナダやイタリアなど転職の自由や永住権が得やすい国と比べると、UAEやシンガポールは管理が厳しく、人権が制限されているという。 シンガポールに来るメイドさんたちは健康診断で妊娠が分かると強制帰国となり、家族を帯同することもできない。

シンガポールの新聞では、たびたび雇用主がヘルパーを虐待したり食事を与えなかったりした罪に問われているというニュースも報じられる。メイドさんたちが劣悪な環境に置かれた場合に、抜け出すためのサポートの必要性も叫ばれており、NPOやメイドコミュニティが発達している国もある。

女性学の世界では、先進国のホワイトカラー層がこれまで「女性の役割」とされていた家事を別の国の貧しい女性、つまりメイドさんたちに任せることで解決していることについて、その階層化を指摘する議論も巻き起こってきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

長期金利上昇、水準には「コメントできない」=片山財

ビジネス

需要抑制策、あらゆる可能性を排除せず臨機応変に対応

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米イラン停戦協議への思惑

ワールド

イラン、米国と合意したLNGタンカーの海峡通過認め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中