最新記事

労働

年間100万円、メイドさんを雇って得た「気づき」 高い?安い? 主婦の仕事に比べたら......

2019年2月4日(月)20時00分
中野円佳 (ジャーナリスト ) *東洋経済オンラインからの転載

住み込みでメイドを雇えば、家事の問題はすべて解決できるのだろうか? DragonImages-iStock photo

日本で共働き家庭が増え、夫婦間での家事育児の分担に苦慮する人も増えるなか、家事手伝いの「メイド」さんを雇えばいいではないか、と簡単に言われることがある。住み込みメイドを導入している国の様子が、「こんなに快適!」と非常にポジティブな形でメディアに出てくるのも見かける。

筆者はシンガポールに住んでおり、約1年間フィリピン人の住み込みのメイドさんを雇っていたこともある。そのためメイド事情について尋ねられることも多い。確かに日本にいる多忙な共働き夫婦は、会社で長時間働き、家事・育児も自らこなし......と、明らかに手が足りていないようにも見える。

はたして「住み込みメイド」はすべてを解決してくれる万能薬なのだろうか? 頼む側の視点、働く側の視点それぞれを踏まえると、費用は家事労働の値段として高いのか安いのか? 実体験や女性学の見地を踏まえながら、さまざまな面から考えてみたい。

ラクではない雇用と教育のプロセス

まずはシンガポール事情。シンガポールでドメスティックヘルパー、つまり住み込みメイドが広く活用されているのは、政府が国としてシンガポール人女性に外で働いてもらうため、フィリピンやインドネシアなどから外国人家事労働者を受け入れている背景がある。

ただし、雇うのが簡単かというと、そうではない。当然、それなりの手間と責任が生じるのだ。

まずは雇用契約。住み込みメイドを雇いたければ、MOM(人材省)に雇用主としての登録をし、eラーニングで必要な知識を学ぶ。家事労働者は雇用主の自宅に住み込むことが前提になり、雇用主はいわば身元引受人となって何かメイドが問題を起こせば責任が問われる。間にエージェントが入ることも多いものの、書類のやり取りなどを代行するのが主な役割で、直接雇用の形態をとる。

誰に来てもらうかを選ぶのも大変だ。すでにシンガポールに来ている人の中からエージェントや前の雇用主に紹介してもらうか、スカイプなどを通じて面接をして人を選んで、渡航してきてもらうのだが、家族の安心を任せないといけないので、20人近く面接して決めたというケースも珍しくない。

費用面だが、まずエージェントフィーや保険、新規で来てもらう場合は渡航費など初期費用が万円単位でかかる。肝心の給与は、家事労働者の出身国や経験によって異なる。

わが家はシンガポールの日本人家庭で働いていたことのある独身のフィリピン人女性に、相場の中では割と高めな月750シンガポールドルで働いてもらっていた。別途税金も300ドル程度かかり、トータルで月にかかる費用は日本円で8万円程度。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

三菱自社長、ネクスペリア問題の影響「11月半ば過ぎ

ワールド

EUが排出量削減目標で合意、COP30で提示 クレ

ビジネス

三村財務官、AI主導の株高に懸念表明

ビジネス

仏サービスPMI、10月は48.0 14カ月連続の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中