最新記事

アメリカ政治

マティス米国防長官、「抗議の辞任」

Why Is Mattis Leaving?

2018年12月21日(金)15時00分
トム・オコナー

トランプとマティスは2年前の就任以降、ことあるごとに反目してきた Leah Millis-REUTERS

<国防総省が公開したトランプへの手紙で、マティスは同盟国との関係を軽視するトランプに対する不満を露わにした>

ドナルド・トランプ米大統領は12月20日、ジェームズ・マティス国防長官が2019年2月末に退任すると発表した。その前日にはトランプが突如、アサド独裁政権が居座るシリアからの米軍撤退を表明。撤退に反対だったマティスは、何も知らされなかったようだ。

これまでの多くの政権人事の発表と同様に、トランプはマティス退任をツイッターで明らかにした。

「2年間に渡って私の政権の国防長官を務めて功績を上げてきた、マティス将軍が2月末に退任する。在任中、特に戦闘用装備品の新規調達では素晴らしい進展があった」とトランプはツイートした。「マティス将軍は、同盟国やその他の国々に軍事費用を分担させるうえで、私を大いに助けてくれた。後任の国防長官をすぐに指名する。(マティスの)献身に大いに感謝する」

一方のマティスは同日、トランプの発表に文書で返答し、自分は退任するのではなく辞任するのだと強く主張した。文書中で、「あなた(トランプ)はこれら(同盟国との関係)の問題などについて、より自分の考えに沿った見解を持つ新たな国防長官を指名する権利があるので、自分はこのポストから降りるべきだと考える」と、辞意を伝えている。

トランプに公然と反論

トランプとマティスは、意見が食い違うことが多かった。トランプがアフガニスタンの駐留米軍を縮小しようとしたときは、マティスらがテロ対策として減らせないと説得した。北朝鮮が日本列島越しに弾道ミサイルを飛ばしたときは、「北朝鮮との交渉は無駄だ」と言ったトランプを押しとどめた。あるとき、国防総省の記者団からなぜ辞任しないのかと聞かれると、「(自分には)職務がある。ただそれだけのことだ」と語っている。

<関連記事>トランプを止められる唯一人の男、マティス国防長官が危ない?

マティスは、トランプと初めて会談した時から、さまざまな点で反対意見を表明した。NATO(北大西洋条約機構)は「時代遅れ」と言うトランプになぜ軍事同盟が重要かを説き、「ウォーターボーディング(水責め)」という拷問はなぜやめるべきか話した。それでも、「トランプは、こちらに理があれば説得できない人物ではない」と言っていた。

その後の政権の混乱を考えれば、マティスは間違っていたのかもしれない。今年10月のインタビュー番組で、トランプはマティスが「民主党支持者みたいなもの」と語り、「(辞任)するかもしれない」とほのめかしていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 2

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子供を「蹴った」年配女性の動画が大炎上 「信じ難いほど傲慢」

  • 3

    あまりの激しさで上半身があらわになる女性も...スーパーで買い物客7人が「大乱闘」を繰り広げる動画が話題に

  • 4

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 5

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 5

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 9

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中