最新記事

地球

地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

2018年12月13日(木)16時40分
松岡由希子

南アフリカ・コパナン金鉱の地下1.4キロの深さに生息する線虫類 Image:Gaetan Borgonie (Extreme Life Isyensya, Belgium)

<地下深部にこれまで存在が知られてこなかった微生物の巨大な生物圏が存在することがわかった>

「地球の深部には、様々な生命体が無数に存在する」

深部炭素を研究テーマとして世界52カ国1000名以上の研究者で構成されるグローバルコミュニティ「深部炭素観測所(DCO)」は、2018年12月10日、米ワシントンD.C.で開催されたアメリカ地球物理学連合(AGU)の年次総会において、2009年の創設以来およそ10年にわたる研究成果を報告し、「地球の深部には、まるで"ガラパゴス"のように様々な生命体が無数に存在し、その生物量(バイオマス)は全人類の245倍から385倍に相当する」ことを明らかにした。

「数千年にわたって存在しつづける生物がある」

研究チームでは、世界数百カ所を対象に、海底から2.5キロメートル掘り、深度5キロメートル以上の鉱山や掘削孔から微生物をサンプル採取し、地下深部の生態系モデルを構築した。

これによると、地下生物圏の大きさは、地球の海のおよそ2倍にあたる20億立方キロメートルから23億立方キロメートルで、炭素重量で換算すると150億トンから230億トンにのぼる。地下生物圏には、全生物界を3分する細菌、古細菌、真核生物がすべて存在するが、なかでも細菌と古細菌が多く、地球上の細菌と古細菌のおよそ70%が地下に生息しているとみられている。

光がなく、熱や圧力にさらされ、栄養源も十分とはいえない地下の奥深くで生息する地下微生物は、生活環境やエネルギー摂取などにおいて、地上のものとは大きく異なっている。DCOのメンバーでもある米テネシー大学ノックスビル校のカレン・ロイド准教授は、英紙ガーディアンの取材で「私にとって最も奇妙なことは、数千年にわたって存在しつづける生物があるということです。これらの生物は、代謝はしていますが、生命維持に必要と考えられていたエネルギー量よりも少ないエネルギーで静止しています」と述べている。

matuoka1213b.jpg

南アフリカ共和国にある金鉱山ムポネン鉱山の地下2.8kmで発見されたる真正細菌の1種Candidatus Desulforudis audaxviator。Image courtesy of Greg Wanger (California Institute of Technology, USA) and Gordon Southam (The University of Queensland, Australia)

もちろん、地下生物圏について明らかになっていないことは、まだ数多く残っている。生きるためにどのようなエネルギーを利用して、地下生物圏はどのように広がっていったのか。日本と北米、アフリカでは、深部地下生物圏は似ているのだろうか。また、地震や隕石衝突など、地質学的事象が地下生物圏にもたらす影響についても、さらなる解明が待たれる。地球上での生命の起源についても、深部地下生物圏との関連を交えて、研究がすすみそうだ。

The Cosmos News

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ロッキード、第2四半期利益が予想下回る 航空部門

ビジネス

米新築住宅販売、6月は14カ月ぶり低水準 資材・住

ビジネス

米航空会社の旅客数、5月は5660万人と前月比19

ビジネス

EU、ロシアをWTO提訴 域内企業の製品販売制限巡

MAGAZINE

特集:モデルナの秘密

2021年8月 3日号(7/27発売)

コロナワクチンを高速開発したベンチャー企業モデルナの正体とmRNA治療薬の可能性

人気ランキング

  • 1

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女子ビーチハンド代表

  • 2

    東京五輪は始まる前から失敗していた

  • 3

    国際交流を奪われた悲しき五輪で角突き合わせる日本人と韓国人

  • 4

    肩こりや腰痛に悩む人がハマる大きな失敗 「姿勢をよ…

  • 5

    「三国志」は日本人も中国人も大好き(でも決定的な…

  • 6

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手…

  • 7

    加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽…

  • 8

    コロナ対策で巨大イカ像を作り、20兆円は手付かず...…

  • 9

    ウガンダ選手の失踪は例外ではない──国際大会で「消…

  • 10

    大谷翔平がベーブ・ルースに肩を並べた部分と、すで…

  • 1

    加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽は聴きません。元いじめられっ子からの手紙

  • 2

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女子ビーチハンド代表

  • 3

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手、審判の指摘に絶句

  • 4

    人間のオモチャにされたイルカ死ぬ──野生動物に触る…

  • 5

    1匹だけみにくい子猫、病気と思ったら「オオカミ」だ…

  • 6

    「三国志」は日本人も中国人も大好き(でも決定的な…

  • 7

    東京五輪は始まる前から失敗していた

  • 8

    国際交流を奪われた悲しき五輪で角突き合わせる日本…

  • 9

    ユーチューブが投げ銭機能「スーパーサンクス」導入 …

  • 10

    20万円で売られた14歳日本人少女のその後 ──「中世に…

  • 1

    加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽は聴きません。元いじめられっ子からの手紙

  • 2

    20万円で売られた14歳日本人少女のその後 ──「中世にはたくさんの奴隷がいた」

  • 3

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女子ビーチハンド代表

  • 4

    「1日2個、カットしてスプーンで食べるだけ」 メンタル…

  • 5

    「寝はじめる姿勢」で目覚めが変わる 寝ても疲れが取…

  • 6

    人間のオモチャにされたイルカ死ぬ──野生動物に触る…

  • 7

    韓国で、日本製バイクの販売が伸びている理由

  • 8

    テスラ6月に発売した新型「モデルS」運転中に発火=所…

  • 9

    ある日突然「人工透析です」と告げられたら? 高血圧、…

  • 10

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

STORIES ARCHIVE

  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月