最新記事

戦争

次の戦争では中・ロに勝てないと、米連邦機関が警告

U.S.‘Could Lose’Its Next War

2018年11月15日(木)14時29分
トム・オコナー

11月11日、珠海航空ショーでデモ飛行を行った中国のJ-20ステルス戦闘機 REUTERS

<軍備刷新を着々と進める中国とロシアが手を組めば、アメリカの軍事的優位はあっさり崩れる>

アメリカの軍事的な優位と安全保障は、軍拡で強大化するロシアと中国に大きく揺さぶられている──米連邦機関の最新の報告書がそう警鐘を鳴らした。

首都ワシントンの米国平和研究所が13日に発表した98ページの報告書は、米国防総省が今年1月に発表した2018年版国防戦略を詳細に検討し、ロシアと中国に対する「平和時の競争と戦時の紛争に勝つ方法を明示できていない」と断じた。

ロシアと中国は、国防戦略、国家安全保障戦略、2018会計年度国防権限法案など、トランプ政権が発表した重要な政策文書で、アメリカの最大のライバルとされている。両国とも軍備の刷新を進めており、世界におけるアメリカの優位を揺るがす主要な脅威として、トランプ政権は警戒を強めている。

「次の紛争で、米軍は受け入れがたい甚大な人的被害と多大な経済的損失を被る可能性がある。中国またはロシアとの戦争では、簡単に勝てないどころか、負ける可能性すらある。特に、同時に2つ以上の戦線で戦うことを余儀なくされた場合、敵の軍事力に圧倒されるリスクが大きい」と、報告書は警告している。

「加えて、敵はアメリカ国外で米軍と戦いつつ、アメリカ本国で破壊工作やサイバー攻撃など国力を衰弱させる攻撃を行う可能性があり、それを想定しない戦略立案は愚かで無責任と言わざるを得ない。アメリカの軍事的優位はもはや絶対的なものではなく、その事実がアメリカの国益と安全保障に及ぼす影響は深刻だ」

北朝鮮の核攻撃も想定

報告書はロシアと中国だけでなく、北朝鮮、イランとの紛争が起きる可能性も想定して、「次の国家対国家の戦争ではアメリカが負けることもあり得る」と警告。米軍が劣勢に追い込まれるシナリオをいくつか挙げている。

中国との紛争では2つのシナリオが考えられる。1つは、中国が台湾を急襲して武力統一を果たす場合。もう1つは、中国が領有権を主張し、軍事拠点化を進める南シナ海で、米軍が航行の自由を奪われる場合だ。対ロシアでも2つのシナリオが想定され、1つは「ロシア系住民に対する残虐行為があった、などの虚偽の報告」を受ける形で、ロシアがバルト3国に侵攻し、衛星攻撃ミサイルで米軍を機能不全にするというもの。もう1つは、「ロシアのハッカー集団がアメリカの選挙インフラに大規模なサイバー攻撃を行い」、やはりバルト3国の情勢が一気に悪化するというものだ。

北朝鮮との紛争のシナリオはこうだ。米朝間の緊張が高まり、トランプ政権が在韓アメリカ人の避難準備を進めると、北朝鮮側はそれを紛争の前兆と解釈し、在韓米軍基地を標的に核搭載ミサイルを発射。ただちに停戦に応じなければ、アメリカ本土に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射すると脅しをかける──。

報告書は、イランの軍拡と、中東でイランがテコ入れする武装勢力の影響力拡大も重大な脅威とみなす。イランが「こうした力を使って、ペルシャ湾岸における米軍施設と重要インフラに攻撃を仕掛け、航行の自由を妨げるなどして、アメリカとその同盟国に大きな損失を与える」可能性があると警告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フィッチが仏国債格下げ、過去最低「Aプラス」 財政

ビジネス

中国、米の半導体貿易政策を調査 「差別的扱い」 通

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐

ワールド

トランプ氏、NATOにロシア産原油購入停止要求 対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中