最新記事

ウイグル

ウイグル絶望収容所で「死刑宣告」された兄を想う

2018年11月8日(木)12時20分
長岡義博(本誌編集長)

「兄が死刑宣告を受けたと聞いた後、20ポンド(9キロ)もやせてしまった」と語るヌーリ氏 Newsweek Japan

<収容者数100万人ともいわれる中国・新疆ウイグル自治区の強制収容所にはウイグル人の著名人や文化人も多数収監されている。その1人である新疆大学元学長の弟が語る、会えない兄への思い>

中国・新疆ウイグル自治区における共産党当局のウイグル人強制収容の事実が報じられるようになってから、もうすぐ2年。この間収容者の数は増え続け、今や100万人、あるいは100万人を超えているとも言われる。中でも際立っているのが、教育者や文化人、スポーツ選手など著名人の収監だ。さながら、ウイグルに対する文化的ジェノサイド(大量殺戮)の様相を呈している。

現在拘束されている中でも高位の人物の1人が、自治区最大の教育機関である新疆大学学長だったタシポラット・ティップ教授(60)だ。新疆大学を卒業後、日本に東京理科大学に留学して、理学博士号を取得。地理学と地質学の専門家で、世界的にも名を知られた学者だった。研究プロジェクトの成果から中国教育省に賞を与えられたこともあった。

プロパガンダ映像で「見せしめ」に

タシポラット氏は17年3月、北京の空港からドイツに向かう途中で中国当局に拘束された。アメリカの短波ラジオ放送「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によれば、タシポラット氏はいま、「国家分裂主義者」としてほかの教育関係者・作家らとともに収容所にいる。「共産党に反対するグループをつくり、地位を利用して分裂主義を実現しようとした」との「自らの罪」を認めるプロパガンダ映像素材となっており、その映像は自治区内の中学校で生徒と教師用に「教材」として使われているという。

タシポラット氏の弟であるヌーリ・ティップ氏(52)は今年10月5日、RFAの報道で兄が2年の執行猶予付き死刑判決を受けたと知った。

【参考記事】ウイグル「絶望」収容所──中国共産党のウイグル人大量収監が始まった
【参考記事】サッカー選手もアイドルも ウイグル絶望収容所行きになった著名人たち

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、インドをWTO提訴 太陽光備品やIT製品巡り

ワールド

ウクライナ軍、東部シベルスクから撤退 要衝掌握に向

ワールド

グレタさん、ロンドンで一時拘束 親パレスチナ支援デ

ビジネス

ワーナー買収戦、パラマウントの新提案は不十分と主要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中