最新記事

ブレグジット

イギリスのEU離脱、今後の展開は? 結末を占う「3つのシナリオ」

2018年11月14日(水)15時45分

 11月12日、メイ英首相(写真)は、欧州連合(EU)と何とか離脱協定を成立させようと粘っているが、EUと合意してもその内容を国内の議会で承認してもらうことがより難しい課題になっている。ブリュッセルで10月撮影(2018年 ロイター/Toby Melville)

メイ英首相は、欧州連合(EU)と離脱協定の締結に向けて粘っているが、EUと合意してもその内容を国内の議会で承認してもらうことがより難しい課題となっている。

来年3月29日のブレグジット(英のEU離脱)まで4カ月余りとなったところで、最終的な行方を3つのシナリオとして提示しよう。

(1)混乱だらけのブレグジット

─英議会が合意内容承認せず

英政府とEUのいかなる合意も英議会の承認が必要。承認されなければ、英国は合意なしでブレグジットを迎える。ポンドは下落し、英国債利回りは低下するだろう。

メイ首相が提示している離脱後もEUと緊密な貿易関係を保とうという妥協案は、ブレグジット推進派、親欧州派、閣外協力している北アイルランドの地域政党である民主統一党(DUP)、そして一部閣僚からさえも反対されている。

合意なし、移行期間なしで来年3月29日が来れば、英国とEUの通商関係はそれ以降、直ちに世界貿易機関(WTO)の加盟国・地域という枠組みに変わる。

企業首脳や投資家は、合意なきブレグジットは金融市場をパニックに陥れ、貿易の主な流れを阻害すると懸念。ブレグジット推進派は、そうした心配は大げさで、英国は長期的に繁栄すると強調している。

JPモルガンは9日、英議会は最初にEUとの合意内容を拒絶し、しばらく混乱があった後、来年1月初めに結局承認すると予想した。

最大野党の労働党は、政府とEUの合意には反対票を投じ、議会の支持が得られなかった場合は総選挙を要求すると表明した。

─メイ氏退陣

メイ氏は自身がEUとまとめた合意内容が議会で認められなかった際に、政権の座にとどまるかどうか分からない。

欧州政策を巡って30年にわたる意見対立を抱えてきた与党・保守党は今も内部のあつれきが表面化しており、一部の議員は新たなリーダーの誕生を望んでいる。メイ氏の後釜は不透明だ。

メイ氏が辞任すれば、次期保守党党首選びが始まり、既にぎりぎりのブレグジット協議がさらに後ずれしかねない。

総選挙は法的には必要ではないが、実施される可能性はある。もっとも各種世論調査からすると、決定的な勝利を収めそうな勢力は見当たらない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中