最新記事

英EU離脱

ブレグジット交渉の焦点、アイルランド国境問題でEUが譲歩案提示か

2018年11月2日(金)09時35分

フィナンシャル・タイムズ(FT)は1日、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)交渉で焦点となっているアイルランド国境問題で、欧州連合(EU)側が譲歩案を提示したと報じた。写真はアイルランド国境近くを走るギネスのトラック。REUTERS/Clodagh Kilcoyne

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は1日、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)交渉で焦点となっているアイルランド国境問題で、欧州連合(EU)側が譲歩案を提示したと報じた。

英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間のハードボーダー(厳格な国境管理)を回避すると同時に、北アイルランドと英本土の間の関税検査回避について英国により確かな保証を与える内容という。

EUの交渉担当者は、ハードボーダーを回避するため英国本土をEU関税同盟に残す計画を離脱協定に盛り込むことを提案した。EUは将来の通商関係を巡る約束を離脱協定に盛り込むことを拒否してきたことから、EUにとっては「レッドライン(越えられない一線)」を越えた格好だ。

FTによると、EU側の交渉担当者は、期限までに将来の通商関係が定まらない場合にアイルランド国境の関税審査復活を回避する安全策(バックストップ)について、新たな譲歩案を検討している。

ただ、交渉担当者から今週説明を受けたEU外交筋は、EU側の提案は10月時点から大きくは変わっていないとの見方を示した。

FTによると、EU側が検討している案では、北アイルランドはEUの関税同盟にとどまり、EUの関税規則を完全に適用するほか、モノや農産物・食品に関する単一市場の規制に従う。同時に英国としては関税を巡りEUと「最小限」の枠組みを採用し、EU以外からの輸入にEUと共通の対外関税率や原産地規則を適用する。

この案は10月31日にEU外交官に説明が行われ、英国側に提示されたという。

FTによると英交渉チームはこの案を検討する用意があるか来週にも見解を示す見通しで、EUが11月に臨時首脳会議を開くかどうか判断する上で英国の回答が鍵となる。

EUとの関税同盟に無期限で縛られたくないメイ政権や与党・保守党内の離脱推進派は譲歩案に反対する可能性が高い。

FTによると、EUの案には英国が10月に拒否した項目の多くが依然含まれている。

FTは譲歩案について説明を受けたEU外交官の発言として、「これまでと同じ根本的な問題が残っている」と伝えた。

ただ、報道を受けてポンドは対ドルと対ユーロで上昇した。

[1日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241217issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月17日号(12月10日発売)は「韓国 戒厳令の夜」特集。世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米大統領補佐官、週内にイスラエル訪問 ガザ停戦など

ワールド

シリア、アサド政権崩壊から一夜 暫定政権巡り協議実

ワールド

イスラエル外相、ガザ人質協議に楽観的見通し 間接交

ワールド

アサド氏のロシア亡命、プーチン大統領が決定=クレム
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能の島」の内部を映した映像が話題 「衝撃だった」
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主役の座を奪ったアンドルー王子への批判も
  • 4
    中国の逆襲...自動車メーカーが「欧州向けハイブリッ…
  • 5
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 6
    白い泡が大量発生...インド「下水汚染された川」に次…
  • 7
    ジンベエザメを仕留めるシャチの「高度で知的」な戦…
  • 8
    アサド氏はロシアに亡命...シリア反体制派が首都掌握…
  • 9
    2027年に「蛍光灯禁止」...パナソニックのLED照明は…
  • 10
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 5
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 8
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない…
  • 9
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 10
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中