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「儲かるエコ」の新潮流 サーキュラー・エコノミー

昆虫食は人間にも地球にも優しい(食糧危機対策になるだけでなく)

2018年10月15日(月)16時25分
大橋 希(本誌記者)

<いま、牛肉の代替になり得るとして期待を集めるのが昆虫食。なかでもコオロギは......。本誌10/16号「『儲かるエコ』の新潮流 サーキュラー・エコノミー」特集より、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)の最新20事例のひとつを紹介>

※本誌10/16号は「『儲かるエコ』の新潮流 サーキュラー・エコノミー」特集。企業は儲かり、国家財政は潤い、地球は救われる――。「サーキュラー・エコノミー」とは何か、どの程度の具体性と実力があるのか、そして既に取り組まれている20のビジネス・アイデアとは?

肉食、特に牛肉が環境に優しくないことは、今や常識。その代替食になり得るとして、期待されているのが昆虫だ。例えばコオロギは100グラム当たりのタンパク質量は牛とほぼ同じ。一方、牛の体重を1キロ増やすのに必要な水が1500リットルなのに対し、コオロギは1リットルだ。CO2(二酸化炭素)排出も少量で済む。

欧米では昆虫食の関連企業が次々と登場しており、EUも今年1月から域内での食用昆虫の取引を自由化(ヨーロッパイエコオロギ、ミツバチ、トノサマバッタなど)。虫を食べることについての許容度が比較的高いのは、昨年11月に飼育・販売が許可されたフィンランドだ。

代表的企業が、コオロギを使った食品(写真)や養殖設備を開発・販売するエントキューブ。ロバート・ネムランデル共同創業者が昆虫食に注目したのは、2012年に火星移住計画「マーズ・ワン」に応募し、火星での食料確保について考えたときだった。「地球の資源枯渇や人口増加による食料不足の問題に通じると思った」と、彼は本誌に語った。「コオロギは飼育場所も取らず、餌は食料廃棄物でフンは有機肥料にできる」

2014 年に首都ヘルシンキで創業し、コンテナで飼育を開始。今では工場や養豚場などから飼育場への転用例も国内で順調に増えている。粉末をパンやチョコレートに入れたり、レストランで利用してもらうなど用途もさまざま。宇宙での飼育を見据え、NASAと協力もしている。

8月には米ウィスコンシン大学マディソン校の研究者らが、粉末コオロギを食べると腸内環境が改善するとの研究結果を発表しており、体にも優しいとなれば試す価値はありそう。揚げたコオロギは小エビのような風味。昆虫と甲殻類は近い存在なので、甲殻類アレルギーのある人は注意したほうがいい。

【参考記事】サーキュラー・エコノミー 世界に広がる「儲かるエコ」とは何か
【参考記事】日本の消費者は欧州と違う、循環型経済に日本企業はどうすべきか
【参考記事】パンの44%が廃棄処分、だからビールを作りました

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