最新記事

エアライン大革命

ペットは飛行機の乗客? 機内と機外で激論が

2018年10月10日(水)18時00分
ニューズウィーク日本版編集部

旅行するなら家族同然のペットも一緒に連れていきたい Manny Ceneta/GETTY IMAGES

<クジャクは「感情支援動物」なのか......ペットを飛行機に連れて乗せる乗客の増加で議論が勃発>

旅行するなら、家族同然のペットも一緒に連れていきたい。そんな思いから乗客がペット連れで飛行機に乗り込む姿は、アメリカでは珍しくない(冒頭写真)。

そんな愛犬家の家族に今年3月、悲劇が起きた。一家が米ヒューストン発、ニューヨーク行きの米ユナイテッド航空の機内にフレンチ・ブルドッグの子犬を米運輸保安局(TSA)認可済みのキャリーバッグに入れて持ち込んだが、客室乗務員から頭上の荷物棚に収納するよう指示された。押し問答の末にしぶしぶ従い、約3時間半後に着陸して棚を開けると、子犬は息絶えていた。必死で蘇生を試みたが息を吹き返すことはなく、一家は機内で号泣したという。

ユナイテッド航空の米国内線では、犬や猫などの搭乗費用125ドルを支払い、前方の座席の下に完全に収まるケースに入れれば機内に持ち込むことが可能だ。だがこの子犬の入ったバッグは通路にはみ出していたため、客室乗務員が頭上の棚に入れるよう指示。棚の中で子犬は30分ほど吠え続けていたが、やがて静かになったという。棚の中で窒息死したとみられている。

米運輸省によれば、アメリカでは昨年、17の航空会社によって約50万7000匹のペットが運ばれた。なかでもユナイテッド航空は最多の約13万8000匹を搭乗させたが、そのうち18匹が死亡。同社は子犬死亡の件については全面的に責任を認め、謝罪する声明文を発表した。

悲劇がある一方で、厚遇を受けて救われた犬もいる。7月、フロリダからマサチューセッツ州行きのジェットブルー機内に持ち込まれた3歳のフレンチ・ブルドッグが、呼吸困難で舌が青くなっているのを飼い主が発見。客室乗務員の機転で座席の上に座らせ、酸素マスクを着けてやると呼吸を取り戻した。

飼い主側が物議を醸すこともある。1月には、米ニュージャージー州の空港にクジャクを同伴して現れた乗客がいた。一部の航空会社では規定の要件を満たした場合に限り、乗客の感情や精神のセラピーを助ける「感情支援動物」や介助動物の搭乗が無料で認められている。ユナイテッド航空はクジャクは要件に合わないと事前に搭乗を断っていたものの、乗客は当日にクジャクを連れてきた。ユナイテッド側はクジャクの搭乗を再度拒否したが、空港にクジャクがいる様子がネット上で拡散され「感情支援動物」の同伴の是非について議論が飛び交った。

騒動を受けて、アメリカン航空は感情支援動物であっても搭乗できない動物のリストを発表。両生類やヤギ、ハリネズミ、ヘビなどは「NG」だが、驚くことに要件に合えば「小型の馬」でも搭乗できる。

航空業界団体エアラインズ・フォー・アメリカによれば、感情支援動物として搭乗したケースは16年には約48万件だったのが、昨年は約75万件に急増した。搭乗費用を浮かせるために訓練されていない動物を感情支援動物と偽って持ち込むケースもあるといい、航空業界側は要件を厳格にするよう米当局に求めている。

<本誌2018年10月02日号「特集:エアライン大革命」より転載>

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ステファニク下院議員、NY州知事選出馬を表明 トラ

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、11月速報値は約3年半ぶ

ワールド

イラン大統領「平和望むが屈辱は受け入れず」、核・ミ

ワールド

米雇用統計、異例の2カ月連続公表見送り 10月分は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 9
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中