最新記事

アンチエイジング

老化抑制のために若者の血液を輸血する診療所、NYに開設予定で物議をかもす

2018年10月2日(火)16時50分
松岡由希子

老化抑制のために若者の血液を輸血 (写真はイメージ)choja-iStock

<「老化抑制のために1回8000ドルで若者の血液を輸血する」という初の診療所がいよいよニューヨークで開設される見通しとなり物議をかもしている>

200名に輸血し臨床試験も実施した...

「老化抑制のために1回8000ドル(約90万4000円)で若者の血液を輸血する」という初の診療所がいよいよ2018年末までに米ニューヨークで開設される見通しとなり、医療業界の内外で物議をかもしている。

この診療所を運営するのは、米スタンフォード大学出身のジェシー・カーマジン氏が2016年に創設したスタートアップ企業「アンブロージア・メディカル」だ。診療所の開設に先立ち、2016年6月から2018年1月にかけて、16歳から25歳までの若者の血漿を35歳以上の成人200名に輸血する臨床試験も実施した。

なお、輸血はアメリカ食品医薬品局(FDA)で長年承認されている治療法であり、米国では、年間500万人の患者に対して1億4600万回の輸血が行われている。従って、「アンブロージア・メディカル」の"老化抑制のための輸血"は、FDA認可外の治療として実施可能であり、輸血を希望する人に対して、この治療に効果があることを示す必要もない。

マウスでは輸血による老化抑制効果があった

血漿とは、血液中の有形成分である赤血球、白血球、血小板を除いた透明で淡黄色の液体であり、タンパク質やビタミンなどが含まれている。2013年5月に米ハーバード大学のエイミー・ウェイジャー博士らの研究チームが「マウスは老化に伴って血液中の『GDF11』と呼ばれるタンパク質が減少するが、老齢マウスの心臓の筋肉に若齢マウスの『GDF11』を注入すると老化による心臓肥大が治まった」との研究論文を発表した。

ほかにも若齢マウスの「GDF11」の注入によって、老齢マウスの脳で新たな血管やニューロンの生成が促進されることや、骨格筋を回復させる幹細胞が刺激される刺激されることも明らかとなっている。

カーマジン氏は、このような輸血による老化抑制効果がヒトにも期待できると考えており、臨床試験の結果は公表していないものの、米デジタルメディア「ビジネスインサイダー」の取材に対して「その結果は実に前向きなものであり、治療の安全性も確認できた」と答えている。

現在、「アンブロージア・メディカル」では、ニューヨークの診療所に勤務する有資格医師を募集するとともに、300万ドル(約3億4000万円)規模の出資を募り、診療所の開設に向けた準備をすすめている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

街角景気10月現状判断DIは2.0ポイント上昇の4

ワールド

タイ、カンボジアとの停戦合意履行を停止へ 国防相が

ワールド

27年のCOP32開催国、エチオピアに決定へ=CO

ビジネス

米ボーイング、777X認証試験の次フェーズ開始承認
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中