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沖縄県知事選で与党系候補敗北 安倍政権に求められる夏の参院選1人区対応強化

2018年10月1日(月)12時55分

9月30日、沖縄県知事選で米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する前自由党衆院議員の玉城デニー氏が当選したことで、辺野古問題の行方は不透明感が一段と濃くなった。写真は2013年、宜野湾市の同基地(2018年 ロイター/Nathan Layne)

沖縄県知事選で米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する前自由党衆院議員の玉城デニー氏が当選したことで、辺野古問題の行方は不透明感が一段と濃くなった。

また、与野党とも国政選挙並みの態勢で支援したのは、来年夏の参院選を意識していたためで、敗れた自民、公明両党は敗因分析とともに、参院選の帰すうを握る一人区での対応強化を迫られそうだ。

朝日新聞・沖縄タイムス・QAB琉球朝日放送の出口調査によると、30代以上の幅広い年代で玉城氏が支持を広げ、無党派層では7割の支持、自民・公明支持層でも2─3割の支持を得たという。

辺野古移設を巡っては、各種の世論調査で県内世論の5─7割が反対という結果が出ており、明確に反対を掲げた玉城氏が、賛否を明確にしなかった前宜野湾市長の佐喜真淳氏候補(自民、公明、維新、希望推薦)を引き離した格好だ。

また、選挙戦でもう1つのポイントになった経済政策では、佐喜真陣営が政府との強い連携で経済を上向かせると主張。建設業界などを中心に支持を広げる戦術を展開した。

ただ、玉城陣営も翁長県政で外国人観光客が増えた経済実績を強調して対抗した。外国人観光客の増加は、ビザ緩和など安倍晋三政権が進めた政策の効果も大きく、政権側からは政府・与党の政策効果だったのに、翁長県政の得点というイメージが出ていたことにいら立ちの声も聞かれた。

また、来年夏の参院選への影響を懸念する見方も、与党関係者の一部から出ている。ある自民党関係者は「(野党各党は)共闘すれば勝てることが分かり、参院選に向けて勢いづくだろう」と警戒感を示した。

さらに参院選の行方を大きく左右する沖縄県を含めた一人区で、自公対野党の対決構図が鮮明になるなら、自民党にとって、組織力のある公明党の選挙協力は不可欠の要因になる。

そこで、問題になるのが安倍首相の掲げる憲法改正への道筋だ。公明党の山口那津男代表は30日の公明党大会で「(憲法)9条改正が緊急になされるべきだとは必ずしも言えない」と明言し、改憲への慎重姿勢を強めつつある。

友党・公明党が消極的な憲法改正に対し、自民党内からも憲法改正は慎重に進めざるを得ないという見通しがじわじわと広がっている。

また、26日の日米首脳会談では、米国が強く望んだ2国間の自由貿易協定(FTA)につながる可能性がある通商交渉の開始が決まった。農業関係者や自動車業界関係者には、この先の展開に不安感を持つ声が浮上。野党側は10月にも召集される臨時国会で、新たな通商交渉がFTAにつながるのではないかと強く追求する構えをみせている。

今回の沖縄知事選で与党支援候補が敗北し、野党側を勢いづかせる要因が生じたことは否定できず、自民党総裁選での連続3選を踏まえ2日に内閣改造を実施する安倍首相にとって、いきなり向かい風でのスタートになりそうだ。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

[東京 30日 ロイター]


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