最新記事

対テロ戦争

アジア大会開催直前、インドネシアは厳戒態勢 5月以降テロ容疑で283人逮捕

2018年8月9日(木)16時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

8月1日、ジャカルタ中心部ではアジア大会に向けたテロ対策の演習が行われた。 Beawiharta Beawiharta / REUTERS

<開会までカウントダウンが始まったアジア大会。国際的に注目を集めるイベントを前に、インドネシア政府は威信をかけてテロ対策に取り組んでいる>

インドネシア国家警察のティト・カルナフィアン長官は8月7日、同月18日から首都ジャカルタとスマトラ島パレンバンで開催されるアジア大会に向けてテロ対策を強化してきた成果として、今年5月に発生したスラバヤでの連続爆弾テロ事件以降、テロ容疑者283人を逮捕したことを明らかにした。

インドネシアでは5月13日午前に第二の都市スラバヤ(ジャワ島東部)で市内のキリスト教会3か所が連続爆弾テロの標的とされる事件が発生。自爆犯を含めて13人が死亡した。さらに同日夜スラバヤ近郊で爆弾が爆発して3人が死亡。翌14日にはスラバヤ市警本部でもテロが起きるなど深刻なテロの連鎖に見舞われた。いずれも中東のテロ組織「イスラム国(IS)」を信奉するインドネシアのテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」のメンバーによる犯行だった。

JADの他にインドネシアには「ジェマ・アンシャルット・タヒド(JAT)」「ヌガラ・イスラム・インドネシア(NII)」などのイスラム教テロ組織の存在が知られている。

スラバヤでの連続テロ事件を深刻に受けとめた政府は、国家警察を中心に治安組織の総力を挙げてテロリストの逮捕拘束、テロ組織の壊滅、テロ事件の未然防止に取り組んできた。

その結果5月のスラバヤ連続テロ事件から約3カ月となる8月6日までに、反テロ法違反容疑などでテロ組織メンバーやその仲間など283人を逮捕したという。

アジア大会期間中のテロを警戒

インドネシアは8月18日から4年に1度開催されるアジア地域のオリンピックと言われる「アジア大会」のホスト国として大会運営に当たる。9月2日までの間日本を含めた45カ国から約15,000人が参加して、41競技465種目で金メダルをかけた選手らの熱い闘いが繰り広げられる。

大会の成功と選手らの安全のためにインドネシア政府は大会期間中に国軍兵士と警察官約4万人を動員して、警戒警備とともにテロ対策にあたるとしている。

インドネシアでは長年国会で反テロ法の改正強化案が議論されてきたが、継続審議となり採決されることはなかった。ところがスラバヤの連続爆弾テロを契機に国会での審議が急展開して進み、5月25日に改正案が可決された。

新たな改正反テロ法ではこれまで警察主体だったテロとの戦いの前面に国軍が関与できるようになったほか、これまでテロ行為につながる証拠がなければ摘発できなかったテロ事犯でも「テロ組織のメンバーである」という理由だけで拘束、逮捕が可能になった。

ティト国家警察長官は「武器の所持や具体的なテロ計画、あるいはテロに結びつく行動などの"証拠"が必要だったためにこれまで多くのケースで摘発が手遅れになりテロが起きてしまったことがある」として新法により事前検挙などでテロを未然に防ぐことが容易になったとの見方を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、FRB次期議長の承認に自信 民主党の支

ワールド

エプスタイン文書追加公開、ラトニック・ウォーシュ両

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    【銘柄】「大戸屋」「木曽路」も株価が上がる...外食…
  • 10
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中