最新記事

事件

29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の容疑者が再犯 少年法見直しの議論は海外にも 

2018年8月27日(月)15時00分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)

1989年の事件では、被害者の遺体はドラム缶にコンクリート詰めにされて東京・江東区の埋立地に遺棄された。写真は、筆者が事件の翌年の1990年に撮影した同じ江東区内の埋立地の様子。この場所には現在は商業施設が立ち並ぶが、現在は幹線道路になっている遺体遺棄現場と同じく、人気のない荒野だった。(写真・内村コースケ)

<戦後最悪の少年犯罪と言われる29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の犯行グループの1人が、殺人未遂容疑で逮捕された。ネット上では、少年犯罪の厳罰化、匿名報道への異議が叫ばれている。海外では、そうした声に応えるような動きも見られるがー>

8月19日、埼玉県川口市の屋外駐車場で、男性をナイフで刺したとして、埼玉県川口市に住む湊伸治容疑者(45)が殺人未遂容疑で逮捕された。軽トラックで駐車場に入ってきた2人のうち、32歳の男性の右肩を所持していた警棒で殴ったうえ、首の後ろをナイフで刺し、殺害しようとした疑い。駐車トラブルの末の犯行とされているが、『デイリー新潮』の詳報によれば、湊容疑者が駐車場で待ち構えていて、軽トラの2人に因縁をつけ、運転席の男性が窓を開けたところいきなり殴りかかったという。刺されたのは、争っていた2人を止めようとした助手席にいた男性だという。

これが事実だとすれば、なんとも粗暴な犯罪だが、日本国内の新聞・テレビのほとんどはローカルニュースの片隅に、事実経過のみを淡々と伝えている。「殺人」ではなく、「殺人未遂」容疑故に、日本の大手報道機関のスタンスとしては平常運転だと言えよう。容疑者が成人であるため、住所氏名が明記されているのもごく普通の報道姿勢だ。新聞・テレビの報道だけを見れば、ほとんどの人が見過ごすようなニュースであろう。ところが、『デイリー新潮』が湊容疑者の過去にスポットを当てて事件を報じたところ、特にインターネット上で議論を呼ぶ注目のニュースとなった。

新潮によれば、湊容疑者は、実は当時日本中を震撼させた1989年の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の犯行グループの1人だという。犯行の舞台となった自宅2階を提供した主犯格の1人だ。当時16〜18歳の少年4人が、埼玉県三郷市の路上で見ず知らずの17歳の女子高校生を拉致、東京都足立区の湊容疑者の自宅に監禁し、40日間に渡って凄惨な暴行を繰り返した末、殺害。遺体をコンクリート詰めにして江東区内の埋立地に遺棄したことから、事件の通り名がついた。当時16歳だった湊容疑者らには少年法が適用され、懲役4年以上6年以下の不定期刑が下された。今回の事件は、出所後の再犯ということになる。

比ドゥテルテ政権は刑事責任年齢の引き下げと死刑制度復活を掲げる

「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」は、殺害に至る過程があまりに残酷だったことから、特にネット上では今も強い嫌悪感と怒りをもって語り継がれている。そのため、今回の事件に関する新潮の記事が出るやいなや、ネット上には関連トピックが多く立ち、書き込みが殺到した。特に同事件への関心が高いとされる匿名掲示板『5ちゃんねる』は、「少年法って誰のため?」「当時死刑にしておけばこんな事件は起きなかった」といったコメントがあふれかえった。「別の主犯格も、出所後振り込め詐欺容疑で逮捕されている」という情報も実名入りで飛び交った。このように、度を超した凶悪犯にまで、「更生」を前提にした少年法を適用するはおかしいという市民感情があるのは確かだ。

関連する海外の情勢に目を転じると、麻薬犯罪の撲滅を掲げて強硬路線を敷くフィリピンのドゥテルテ政権は、実際にこうした声に応えるかのような政策を掲げている。1つは、刑事責任年齢を18歳から9歳に引き下げるというもの。もう1つは、死刑制度の復活だ。とはいえ、前者の法案は国内外の人権擁護団体などから猛烈な批判を浴び、後に引き下げ幅を15歳に改めて法案が再提出されたが、これも昨年7月、議会の小委員会で否決された。

(参考記事)身近な「サイコパス」から身を守るための知識

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英1月小売売上高、前月比+1.8% 24年5月以来

ビジネス

ゴールドマン、中銀の金購入鈍化「一時的」と予想

ワールド

韓国・尹前大統領が非常戒厳を謝罪、判決は報復と批判

ワールド

フィリピン、南シナ海巡り中国と「対話ルート維持」 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 3
    中道「大敗北」、最大の原因は「高市ブーム」ではなかった...繰り返される、米民主党と同じ過ち
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 6
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 7
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 8
    ウクライナ戦争が180度変えた「軍事戦略」の在り方..…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 8
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中