最新記事

教育

18歳人口激減時代に、生き残れる大学の条件とは

2018年8月15日(水)13時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

2050年の18歳人口はピーク時の3分の1にまで減少する Gloda/iStcok.

<今後30年で日本の18歳人口は92年のピーク時の3分の1にまで激減する――特に難易度が低い私大は大淘汰の時代を迎えることに>

少子高齢化の進行により、経営難に瀕する大学が増えている。現在では、私立大学の4割が定員割れの状態だ。

大学入学者の供給母体の18歳人口は、1992年に204.9万人のピークに達した後、減少の一途をたどり、2018年現在では118.0万人。減少は今後も続き、2030年には102.5万人、2050年には81.3万人にまで減ると見込まれる。ピーク時の3分の1になる計算だ。

「進学率が上がれば何とかなる、少なくとも今の入学者数を維持することは可能だ」。こういう見通しもあるだろうが、それは甘すぎる。今年春の大学入学者は62.9万人だが、これを維持するには、2050年の大学進学率は77.4%に上らなければならない。しかし同世代の8割近くが大学に行くような事態は考えにくい。今年春の大学進学率は53.3%だが、そろそろ天井ではないかという見方もできる。

2つのモデルを想定してみよう。1つは、大学進学率が2050年の70.0%までコンスタントに上昇するケース(楽観モデル)。もう1つは、大学進学率は今後上昇せず、2050年の55.0%まで横ばいを続けると仮定するケース(悲観モデル)。想定した大学進学率を18歳人口にかければ、大学入学者数が出てくる。この2方式によるシミュレーションの結果を示すと、<表1>のようになる。

maita180815-chart01.jpg

90年代以降、18歳人口は大きく減ったが、進学率が倍増したので大学入学者数は増えた。しかし今後はそうは行かない。進学率が上がるとする楽観モデルでも、2050年の入学者は56.9万人にまで減る。悲観モデルでは47.7万人だ。2018年現在にくらべて前者は6.0万人、後者は18.2万人の減となり、単純に考えて入学者1000人の大学であれば60〜182校が潰れる計算になる。現実は両者の中間だろうが、凄まじい淘汰が起きるのは間違いない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中