最新記事

中国

貿易戦争でドイツと協力するため、劉暁波の妻を解放した中国

2018年7月19日(木)11時10分
シャーロット・ガオ

夫の死後も自宅軟禁が続いていた劉霞が晴れて自由の身に Lehtikuva-REUTERS

<自宅軟禁にしていた故・劉暁波の妻をドイツに解放したのは、米中貿易戦争でドイツの協力を得たいから>

7月6日、米トランプ政権が中国からの輸入品に25%の追加関税を課す制裁措置を発動した。中国も報復に踏み切り、米中の本格的な「貿易戦争」の火ぶたが切って落とされた。

中国の株式市場に激震が走るなか、中国政府が助けを求めた先はドイツだ。李克強(リー・コーチアン)首相は9日にドイツでメルケル首相と会談し、「保護主義に反対し、自由貿易体制を守る」ことを互いに確認した。

両国は「経済、貿易、投資における二国間協力を促進し、自由貿易と公正かつ広く認められたルールに基づく国際市場を共に守り、市場参入を緩和する」ことで合意。特に自動運転や人工知能(AI)、新エネルギー車などアメリカが中国を狙い撃ちにしている分野で協力を強化することが約束された。

ドイツからの協力を取り付けるに当たって、中国は注目度の高い人権問題で大幅な譲歩をしたようだ。中国の民主活動家で10年にノーベル平和賞を受賞した故・劉暁波(リウ・シアオポー)の妻、劉霞(リウ・シア)の出国を認めたのだ。

劉暁波は8年以上の獄中生活を経て、昨年7月に肝臓癌で死去した。劉霞は夫の死後も当局によって北京の自宅で軟禁状態に置かれ、鬱病を発症。5月初旬には、友人に電話で「怖いものは何もない。ここから出られないのなら自宅で死ぬつもりだ」と話していた。

5月に訪中したメルケルは人権問題、特に劉霞のケースに関して中国当局に圧力をかけたとされる。こうしたなか、中国政府は劉暁波の一周忌直前の7月10日に劉霞の出国を容認。劉霞はフィンランド航空機でドイツの首都ベルリンに到着した。

中国メディアはこの件を報じていないが、劉霞の弟の劉暉(リウ・フイ)は、ソーシャルメディアの微信(WeChat)に記した。「姉は新たな人生を始めるため、正午に北京を離れてヨーロッパに向かった。両親や義兄(劉暁波)が安らかに眠り、(天国で)彼女を祝福していることを願う」

中国のネットユーザーの間には、メルケルへの謝意が広がっているようだ。微信には厳しい検閲を恐れて、劉霞の名を出さない御礼のメッセージがあふれている。

本誌2018年7月24日号掲載

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:イラン戦争でインフレ再燃、トランプ政権に

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産

ワールド

イラン交渉団がパキスタン到着、レバノン停戦要求 米

ビジネス

米国株式市場=まちまち、中東交渉控え様子見 ハイテ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 8
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中