最新記事

アフリカ

コンゴで少年より重宝される少女兵

2018年7月11日(水)11時30分
エリカ・ホール(ワールド・ビジョンUK技術政策責任者)、サラ・ピックウィック(同シニア紛争アドバイザー)

コンゴの保護施設に暮らす少女たちは目の前で多くの人が殺された経験に今も苦しむ Thomas Mukoya-REUTERS

<紛争地域で強制的に民兵組織に加入させられた幼い少女たちは、恐怖と暴力にさいなまれ続けている>

マリアム(身の安全のため仮名を使用)の目は年齢よりずっと年老いている。彼女はまだ13歳かもしれないが、その目は一生脳裏から消えないほどの暴力と恐怖を見てきた。

彼女はコンゴ(旧ザイール)のカサイ地方の村の出身。数十年来の暴力で荒廃が進んだ中央アフリカの広大な国の中でも、激しい紛争を経験した地域だ。直近では2016年に政府軍と反政府系民兵の間で戦闘が勃発して数千人が死亡、全住民が避難民と化した。

紛争が始まったとき、村の指導者らは敵対勢力から住民を守るため民兵組織を結成。村長はマリアムに、家族を守るには戦うしか道はないと告げた。だが当時11歳だった彼女は、この言葉が嘘だったとすぐに気付いた。

彼女は仲間の少年兵を含む多くの人々が目の前で死ぬのを見た。両親が軍に殺されたとき、わずかな身の回り品をまとめて逃げようと決意。何日か歩き続け、民兵から脱走した子供たちが暮らす保護地域にたどり着いた。今では屋根の下で眠り、食べ物もあるが、マリアムの心はひどく混乱したままで悪夢にさいなまれている。

マリアムのような例は、カサイでは珍しくない。民兵の5人に3人は18歳以下とみられ、そのうち半数以上が15歳以下だ。

私たちは、マリアムと同じく民兵に強制加入させられた16人の少女に話を聞いた。彼女たちは無理やり儀式に参加させられ、戦闘時に「弾丸が当たらない体になる」ための掟に従わされた。

彼女たちの多くは軍に両親が殺害されるのを目にして逃げ出し、今では当局に見つかることを恐れながら生活している。コンゴの法律では子供を戦闘に勧誘するのは禁じられ、少年・少女兵は被害者とされるが、警察や軍当局は子供を含む現役・元民兵を片っ端から捕まえている。

少年よりも「規則」に忠実

カサイやコンゴの他の地域で民兵として使われる子供の数は不明だが、06年にユニセフ(国連児童基金)は3万人に達すると試算した。昨年だけでも3000人の子供が加入させられたという。数字に裏付けがないのは、彼らの多くが今も身を隠して暮らしているためだ。

子供たちは大人よりも操るのが容易で、養う費用が少なくて済み、善悪の感覚が未熟なため、民兵組織にとっては好都合だ。子供は言われたことを信じる傾向がある。戦うことで誰かを守れる、死ぬことは決してない、と言われれば妄信してしまう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中