最新記事

2055年危機 100億人の世界

人口爆発 アフリカ人からの「反論」

2018年7月4日(水)19時01分
前川祐補(本誌記者)

ILLUSTRATION BY SHUTTERSTOCK


180710cover-150.jpg<人口増加は止まらず、2055年には100億人を突破。温暖化と資源枯渇で地球が悲鳴を上げている。だが国際機関も警鐘を鳴らすほどの人口増加が予想されるアフリカを、当のアフリカ人はどう見ているのだろう。本誌7/10号(7/3発売)「2055年危機 100億人の世界」特集より>

2050年には世界人口の約4人に1人がアフリカ人という時代が来るほどの人口増加が見込まれるアフリカ。特に経済発展が目覚ましいサブサハラ(サハラ砂漠以南)の人口爆発が顕著で、同年の世界人口ランキングにはナイジェリアなど3カ国がトップ10入りすると予測されている。

国際機関は安定的な経済発展への懸念からアフリカの急激な人口増加を問題視し、警鐘を鳴らしてきたが、当事者であるアフリカ人とは温度差があるようだ。人口爆発の現実をアフリカ人はどう捉えているのか。アフリカ経済に詳しいアクセンチュア・リサーチのリサーチ・スペシャリスト、ティム・ビラビに本誌・前川祐補が聞いた。

◇ ◇ ◇

――アフリカの人口増加の背景は。

経済発展には農業から工業への産業構造の転換と中間所得層の増加が重要だが、アフリカはまだこの転換を終えていない。地方に住む多くのアフリカ人は農業に従事しており、そうした社会では家計維持のために大規模な家族を必要とする。また、そのような家庭にとって子供は「賭け」でもある。例えば10人の子供のうち1人でも奨学金を得て国外の大学に行けば、将来は家族を養ってくれると現実的に考える世帯は多い。もちろん幼くして死ぬ子供の数が多いことも背景にある。

アフリカにとって多産には多くの意味があるが、根本にあるのは深刻な貧困だ。私はナイジェリアの出身だが、地方の村社会では家族が多いほど裕福と考えられがちで、そうした心理的な側面も影響していると思う。

――経済発展に人口増は不可欠だ。

開発経済学の基本では、技術革新に乏しい社会では経済成長はおおむね人口の増加に比例する。アフリカ諸国にとって、人口増加は現在の経済システムの結果であって「問題」ではない。

――人口抑制を求める国際社会の指摘をどう思うか。

人口政策や人口抑制による「問題」解決は極めてマキャベリアン(国家至上主義)的だ。アフリカに限らず多くの国が、それぞれの経済発展の過程でベビーブームなどの人口増加を経験しているはずだが、ことさらアフリカが問題だと指摘されるのは不思議だ。

magSR180703-chart1.png

本誌7/10号「2055年危機 100億人の世界」特集より

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中