最新記事

資源

シンガポール「水問題」が再燃 輸出元マレーシアは大幅値上げ要求

2018年7月3日(火)13時39分

6月26日、島国のシンガポールは半世紀以上、自国で消費する水の半分を隣国マレーシアから輸入してきた。しかし、膨れ上がる債務の削減を目指すマレーシアによって水供給契約は見直される可能性が出てきた。写真は2016年、両国をつなぐ水のパイプライン。(2018年 ロイター/Edgar Su)

島国のシンガポールは半世紀以上、自国で消費する水の半分を隣国マレーシアから輸入してきた。しかし、膨れ上がる債務の削減を目指すマレーシアの新首相によって水供給契約は見直される可能性が出てきた。

シンガポールはかつてマレーシアの一部だったが、1965年に分離独立。その後、何年にもわたって両国の経済・外交取引に影を落とした。その関係はいまだに不安定なままだ。

マレーシア首相に返り咲いたマハティール氏は、最初の数週間で数々のプロジェクトにブレーキをかけ、閣僚の給与をカットした。過去の政権による汚職のせいだと同首相が非難する、約1兆リンギ(約27兆円)に上る同国債務を削減するためだ。

マハティール首相は、シンガポールに売る水の価格に狙いを定めている。

「全くばかげていると思う」と、マハティール首相は25日、シンガポールとの水供給契約について、シンガポールの国営テレビ局チャンネルニュース・アジアとのインタビューで語った。

「1990年代、あるいは1930年代であれば問題なかった」と述べ、契約の再交渉を求める意向を示した。

同日行われた記者会見で水問題について聞かれると、マハティール首相は「急を要する問題ではない」と一蹴した。

シンガポール外務省は同日、電子メールで「両国とも全ての合意条件を完全に順守しなければならない」との声明を発表した。

シンガポールとマレーシアの緊張は、マハティール氏が最初に首相を務めた1981─2003年に高まった。水を巡る対立も難しい両国関係の一因となった。今年の5月に首相復帰してから、92歳のマハティール氏は、首都クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道計画を中止すると表明。また、領有権問題の対象となっている沖合の岩礁を開発する意向を示している。

マハティール首相が水供給問題を蒸し返しているのは、見せかけだとみる専門家もいる。首相が表明したように、マレーシアが高速鉄道計画から手を引けば、同国はシンガポールに違約金を支払わなくてはならない。

「カネだけの問題ではない。彼(マハティール氏)は非常に抜け目ない政治家だ」と、シンガポール国際問題研究所で安全保障問題などを担当するニコラス・ファン氏は言う。「異なるレバーを用意して、それを引くことで特定の結果を得る術を熟知している」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、従業員の解雇費用に3億5000万ドル超計

ワールド

中国の産業スパイ活動に警戒すべき、独情報機関が国内

ワールド

バイデン氏、ウクライナ支援法案に署名 数時間以内に

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中