シンガポール「水問題」が再燃 輸出元マレーシアは大幅値上げ要求
紆余曲折
1962年に締結された合意の下、シンガポールは、マレーシアのジョホール川から1日当たり最大2億5000万ガロン(9億4600万リットル)の水を輸入することができる。これはシンガポールが1日に必要とする水の約58%に相当する。
価格は1000ガロンにつき0.03リンギ。そのうち、少量の処理水は特別価格でマレーシアに売ることが義務付けられている。
シンガポールが最大量の水を輸入する場合、その額は年間約270万リンギ(約7400万円)となる。
水供給契約は、1965年に両国が分離した際に、両政府によって保証された。シンガポールは、同契約を尊重することは、国民国家としての自国が存続することと同じであると明言している。
「水供給を巡る問題は他のどの政策よりも優先されなくてはならなかった」と、シンガポール建国の父、リー・クアンユー元首相はかつてこう述べた。2015年に死去したが、現在は息子のリー・シェンロン氏が首相を務めている。
マハティール首相とリー・クアンユー氏の関係が険悪だったことは有名な話だ。マハティール氏はかつて、不当な契約である証拠として、香港と中国が結んだ契約を指摘したことがある。
公式データによると、香港は昨年、必要な真水の3分の2以上(1日当たり4億8000万ガロン)を中国から買うのに定額47億8000万香港ドル(約670億円)を支払った。
一方、シンガポールは、マレーシアから輸入する水の価格が比較的低く抑えられているのは、処理費用だけでなく、ポンプやマレーシアからのパイプラインの建設、稼動、維持にかかるコストも全額負担しなければならないからだと主張している。
マレーシアは2000年に価格改定を求めたが、シンガポールは2061年以降も価格を固定する案を提示してこれに対抗した。
一連のやりとりを経て、協議は平行線に終わった。マレーシアは、シンガポールが理不尽で、過度に法律を尊重していると非難した。
一方、シンガポールは、話し合いが失敗に終わったのはマレーシアに責任があると主張。マレーシアが、価格を現在の200倍に引き上げるよう要求し、「2061年以降の水供給に関して合意する意思がない」ことが明らかだったとしている。
2011年には、マレーシアの他の場所から水を供給する別の契約が失効した。