最新記事

テロ

刑務所内から犯行指示のテロ指導者に死刑判決 報復テロの危機高まるインドネシア

2018年6月24日(日)20時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

判決後にテロ組織メンバー射殺事件も


アマン被告に死刑判決が下されたことを伝える現地メディア KOMPASTV / YouTube

テロの矛先が治安関係や政府関係施設に向く中、過激なテロ組織の指導者であるアマン被告に死刑判決が出され、弁護士によればアマン被告は控訴するつもりがなく、このまま刑が確定する可能性もある。そうなると過激なテロがさらに先鋭化することも予想されている。

実際、判決直後の22日午後2時半ごろ、ジャカルタ西方スバンで車内のカバンに爆弾らしきものを隠し持っていた男性1人を国家警察の対テロ特殊部隊「デンスス88」の隊員が射殺する事件も起きた。警察によるとこの男性はJADのメンバーで27日に実施される予定の統一地方選挙当日に爆弾テロを計画していたというが、詳細は明らかになっていない。

現場では付近の人が銃声とともに爆発音を2回聞いており、自爆しようとした可能性もでている。

22日の判決公判では南ジャカルタ地裁は約400人の武装警察官が警備し、法廷内にも小銃を持ち覆面をした部隊が待機するなど厳重な態勢の中で判決が言い渡された。閉廷して被告が退廷する際は、覆面部隊がアマン被告の周囲を2重に固めて警戒にあたった。

政治の熱い年だけにテロ厳重警戒も

インドネシアは6月27日には全国17州、115県、39市で州知事などの地方自治体首長、地方議会議員を選ぶ「統一地方選挙」の投票が一斉に行われる。さらに8月10日までには、2019年実施の大統領選挙の正副大統領候補の登録が締め切られる。そして2019年は大統領選に加え国会議員選挙も実施されるという重要な政治日程を控え、国中が熱い政治の年を迎えつつある。

6月22日に射殺されたJADメンバーとされる男が統一地方選を狙ったテロを計画していた、と警察が見ているように、政治日程の節々でテロを警戒する必要がでてくる。特に8月17日のインドネシア独立記念日には式典が個別にそれぞれ行われる政府関連施設や警察施設は特に厳重な警備態勢で臨むことが求められるだろう。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、テスラへの補助金削減を示唆 マスク氏と

ビジネス

米建設支出、5月は‐0.3% 一戸建て住宅低調で減

ビジネス

ECB追加利下げに時間的猶予、7月据え置き「妥当」

ワールド

米上院、トランプ減税・歳出法案を可決 下院で再採決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    未来の戦争に「アイアンマン」が参戦?両手から気流…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中