最新記事

火星探査

NASA、火星で有機分子を発見──生命が存在した可能性を示す新たな証拠か?

2018年6月15日(金)12時50分
鳥嶋真也

季節に応じて増減するメタン

今回もうひとつの発見として発表されたのは、火星のメタンが季節に応じて増減しているということである。

キュリオシティは地面を探るいっぽうで、大気中にあるメタンについても観測し続けていた。そして6地球年(約3火星年)にわたる継続的な観測によって、ゲイル・クレーターが夏の間はメタンが増え、冬には少なくなる傾向があることを突き止めた。

火星にメタンがあることは、2000年代前半、欧州の探査機などの観測によって判明。メタンは、火山活動や、ある種類の岩石と水との化学反応、そして生物活動などから発生する。

また、メタンは太陽からの紫外線などで破壊されるため、火星では短時間しか存在できないはずであり、いま現在もメタンがあるということは、なんらかの活動によって、いまなお発生し続けていると考えることができる。

今回の発見の肝である、メタンの量が夏に増え、冬に減るということは、地球では起こらず、火星ならではの不可思議な現象である。科学者らは、たとえば地下の氷の中に閉じ込められており、夏にはそれが溶けて漏れ出し、冬には凍って少なくなるという可能性を考えているが、そのメカニズムは特定されていない。

また、そもそもメタンがどのようにして作られたのかもわかっていない。火星には火山活動は確認されていないため、岩石と水との化学反応かもしれないし、微生物の活動によってできたものなのかもしれない。あるいは太古の昔に作られたものが、徐々に放出されているという可能性もある。

mars003.jpg

ゲイル・クレーターはかつて湖だったと考えられている (C) NASA

火星に挑み続ける人類

人類は火星――とくにそこにいた、あるいはいまもいるかもしれない生命の謎について、約半世紀前から挑み続けてきた。まだ答えは見つからないが、それでも多くのことがわかってきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中