最新記事

健康

トランス脂肪酸の撲滅に向けた6つのステップ WHOが発表

2018年5月17日(木)16時30分
松岡由希子

人工的なトランス脂肪酸の撲滅を目標に Jaromila-iStock

<WHO(世界保健機関)は、トランス脂肪酸(トランス型不飽和脂肪酸)を世界の食料供給から撲滅するための独自ガイドを発表した>

WHO(世界保健機関)は、2018年5月14日、人工的な油脂加工から生成されるトランス脂肪酸(トランス型不飽和脂肪酸)を世界の食料供給から撲滅するための独自ガイド「REPLACE」を発表した。

「REPLACE」は、REview(トランス脂肪酸の供給源とその状勢をレビューする)、Promote(トランス脂肪酸からより健康的な油脂への切り替えを推進する)、Legislate(トランス脂肪酸の排除のための法制化を行う)、Assess(食料供給におけるトランス脂肪酸の内容とその消費変化について評価・モニタリングする)、Create(トランス脂肪酸がもたらす健康への悪影響について啓発する)、Enforce(政策と規制の遵守を強化する)という、トランス脂肪酸の撲滅に向けた6つのステップの頭文字から名付けられたものだ。

WHOでは、2019年から2023年までの5カ年計画における優先目標のひとつとして、人工的なトランス脂肪酸の撲滅を挙げており、その実現に向けて「REPLACE」を積極的に活用するよう各国に呼びかけている。

年間50万人以上が過剰摂取による心血管疾患で死亡...

トランス脂肪酸は、乳製品やウシ・ヒツジなどの反芻動物の肉に含まれる天然由来のものと、水素の添加によって液体の植物油や魚油を半固体または固体の油脂に加工する過程で生成される「部分水素添加油脂(PHOs)」に分類される。

この人工的なトランス脂肪酸は20世紀初頭からバターの代替品として取り入れられ、1950年代から1970年代にかけて広く普及した。今日、ケーキやクッキー、ドーナツなどの焼き菓子、スナック菓子、フライドポテトやナゲットといった揚げ物など、様々な食品に幅広く用いられている。

しかし、トランス脂肪酸の過剰摂取は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の増加とHDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少をもたらし、心血管疾患のリスクを高めることがわかっている。WHOの予測によれば、年間50万人以上がトランス脂肪酸の過剰摂取による心血管疾患で命を落としているという。

デンマークなど欧州5カ国以上で法規制

近年、欧米を中心に、人工的なトランス脂肪酸を規制する動きが活発になってきた。欧州では、デンマークが「食品中のトランス脂肪酸の量を全脂質の2%以内とする」との法規制を2003年に世界で初めて定めたのをきっかけに、スイス・ノルウェー・オーストリアなど、欧州5カ国以上で同様の法規制が設けられている

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中