最新記事

米朝首脳会談

交渉は無駄と悟った?──トランプが米朝首脳会談を中止した理由

2018年5月25日(金)14時36分
トム・オコナー

(3)トランプ政権内の強硬派から圧力があった

今年3月、トランプは政権をよりタカ派に向かわせる閣僚人事を行った。まずは国務長官をレックス・ティラーソンから前CIA長官のマイク・ポンペオに交替。コンドリーザ・ライス元国務長官ら多くの有識者が、ティラーソンは困難な米朝交渉の進捗に貢献していたと評価していた。またトランプは、国家安全保障担当の大統領補佐官をH・R・マクマスターからジョン・ボルトンに交替させた。ボルトンは北朝鮮に対して「リビア方式」(核開発を完全に放棄した後に制裁を解除する)の適用を主張し、米朝関係についても首脳会談がなくなれば軍事行動が取れるのに、などと言ってきた。

(4)すでに北朝鮮から十分な譲歩を勝ち取ったと思った

会談中止は、北朝鮮・北東部にある豊渓里の核実験場を爆破した直後に発表された。実験場はいまだに使用可能だという報告もあるが、金正恩は表面的には、核実験場を破壊し核実験を中止するという4月の南北首脳会談での約束を実行したことになる(長距離弾道ミサイルの発射実験を中止する、とも約束した)。核実験場が「破壊された」現在、トランプは一定の目標を達成したと感じたのかもしれない。

過去のトラウマ

(5)首脳会談をしてもアメリカが「明確な勝者」になれそうにない

トランプは4月、もし米朝首脳会談が「実りある」ものでなければ「謹んで席を立つ」つもりだと語った。公式には認めていないが、米朝双方は会談に向けていくつかの譲歩を申し出たようだ。アメリカは韓国との合同軍事演習に原子力潜水艦を投入するのを控えた。北朝鮮は核実験を停止し、豊渓里の核実験場を爆破して、拘束していたアメリカ人3人を解放した。

過去の米政権は、北朝鮮に相当の譲歩を重ねた末に核開発を放棄させるのを失敗している。金正恩が抜け目のない政治指導者だとわかった今、トランプは交渉で説得することを諦めたのかもしれない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局

ワールド

ポーランドの2つの空港が一時閉鎖、ロシアのウクライ

ワールド

タイとカンボジアが停戦に合意=カンボジア国防省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中