最新記事

イラン

イラン核合意離脱でトランプが狙う「体制転換」シナリオ

2018年5月9日(水)19時49分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授=国際関係論)

そして間違いなく言えるのは、実際に戦争が起きた場合、さらに多くの人命が失われ、アメリカの金が無駄に費やされるだけではなく、より広範な地域紛争の火付け役となる可能性もあるという点だ。

こうした事態を引き起こした責めを負うべき唯一の存在は、現在ホワイトハウスの大統領執務室に座っている。トランプがどれだけ騒ぎを起こし、責任を転嫁し、言葉足らずのツイートを連発しても、この事実を覆い隠すことはできない。

この大失策で改めて浮き彫りになったのは、トランプが2016年の大統領選でアメリカ国民に約束したのとは裏腹に、他国への積極的介入を控えるつもりもないし、オバマ前大統領の犯した過ちを正すつもりもないということだ。

むしろトランプは、単純で洗練度に欠けて一面的で、軍事作戦に重きを置きすぎたジョージ・W・ブッシュ大統領の1期目の外交政策へと、我々を引き戻している。

ボルトンを国家安全保障問題担当補佐官に、ポンペイオを国務長官に任命し、さらにはテロ容疑者への拷問を指揮したとされるジーナ・ハスペルを中央情報局(CIA)のトップに指名した一連の動きは、ブッシュ政権時代の外交政策への後戻りだ。それがどれほど「効果的」だったかは、ご存じの通りだ。

チャーチルは間違っていた

かつてドイツ帝国の首相を務め、「鉄血宰相」の異名を取ったオットー・フォン・ビスマルクは、「自らの失敗から学ぶことも悪くないが、他人の失敗から学ぶ方が良い」との名言を残した。

だがイランとの核合意問題で、アメリカは、自国と他国、どちらの失敗からも学ぶ能力がないことを露呈した。

また、ウインストン・チャーチルの言葉として伝えられている「アメリカは常に正しい行動を取る」という言葉は、今や訂正が必要だ。

トランプ政権下のアメリカは、常に間違った行動を取っているようだ。しかもこれらの決断は、どう見てもより優れた選択肢を先に検討しながら、それを退けた上でのものなのだ。

(翻訳:ガリレオ)

From Foreign Policy Magazine

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、米との直接交渉遮断 トランプ氏「文明破壊」

ワールド

一部原油現物が最高値、150ドルに迫る 供給ひっ迫

ワールド

イラン、サウジ・ジュベイルの石化コンビナート攻撃 

ビジネス

中東戦争がインフレ押し上げ、年内約2.75%に上昇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 4
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 5
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 8
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 9
    「人間の本性」を見た裁判官が語った、自らの「毒親…
  • 10
    スパイス企業の新戦略...エスビー食品が挑む「食のア…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中