最新記事

イラン

イラン核合意離脱でトランプが狙う「体制転換」シナリオ

2018年5月9日(水)19時49分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授=国際関係論)

トランプが5月8日に表明したイラン核合意からの離脱は外交上の大失策? Jonathan Ernst-REUTERS

<イランに核兵器を持たせたくないなら、核合意を維持強化するのがベストの選択肢だった。世紀の失策をやらかしたトランプ一味の考えとその恐るべき影響は>

以前から予想されていたように、ドナルド・トランプはイランとの核合意(包括的共同作業計画:JCPOA)からの離脱を決定した。これはトランプ自身のエゴやバラク・オバマに対する嫉妬、強硬派の支持者やタカ派の大統領顧問たち、何より彼自身の無知に屈した結果だ。

今回のトランプの決定は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱と共に、彼の最悪の外交失策となる可能性が高い。

なぜこんなことになったのか。トランプの心の内を理解することが重要だ。

トランプは、イランが核兵器を保有するのを阻止しようとしたわけではない。もしそれが狙いならむしろ合意の維持にこだわり、最終的には合意を恒久化するために交渉する方が、はるかに筋が通っている。

そもそも、イランの核関連施設を監視し査察する国際原子力機関(IAEA)と米情報機関は、核合意に署名して以来、イランはこれを完全に遵守していると保証している。政治ジャーナリストのピーター・ベイナートが指摘するように、約束を守っていないのはアメリカのほうだ。

アメリカは信用を失った

トランプは、シリアのバシャル・アサド政権やレバノンのシーア派武装組織ヒズボラを支援するイランに対抗しようとしたわけでもない。もしそれが狙いなら、イランの核兵器保有を妨げる合意を維持し、他の国々をアメリカの陣営に引き入れて、イランに圧力をかけることこそ合理的だったはずだ。

だが、核合意を成立させた多国間の連合を新たにまとめることは不可能であるばかりか、イランはアメリカと交渉する気を失くしてしまった。トランプはいずれそのことを思い知るだろう。

信用を犠牲にしてまで核合意を離脱したトランプの真意は単純だ。イランをペナルティボックスに入れて、外界との接触を断とうとしたのだ。

この点、イスラエルと米イスラエル・ロビーの強硬派、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官、マイク・ポンペオ国務長官らタカ派の思惑は一致している。

彼らの最大の懸念は、アメリカと中東の同盟国がイランを正当な中東の大国と認めざるを得なくなること、イランが中東である程度の影響力をもつのを認めなければならなくなることだった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 A

ビジネス

ANA、国内線65便欠航で約9400人に影響 エア

ワールド

アングル:平等支えるノルウェー式富裕税、富豪流出で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中