最新記事

教育

全国の高校でホットワードとなった「ポートフォリオ」とは? 学力以外の主体的活動も受験評価に

2018年4月17日(火)15時00分
福島 創太(教育社会学者)※東洋経済オンラインより転載

従来は測りきれなかった学力以外の生徒たちの能力が可視化される

「ポートフォリオ」という言葉からみなさんは何を連想するだろうか。元々は「書類入れ」を意味する言葉だが、転じて「アーティストが自己紹介用にまとめた作品集」や「投資家の資産構成」といった意味で用いられている。さらに最近では、学校現場や教育分野でも「ポートフォリオ」という言葉が頻繁に使われるようになった。

「JAPAN e-Portfolio」というwebサイトが2017年10月にオープンしたことがきっかけだ。文部科学省の委託事業として始まったこのサイトでは、高校生が学校内外の活動を記録し、それらを高校の先生が確認することができる。

学力以外の能力をデータ化

生徒の記録は、「探究活動」「生徒会・委員会」「学校行事」「部活動」「学校以外の活動」「留学・海外経験」「表彰・顕彰」「資格・検定」という項目に分けられる。各項目には「振り返り」を記入するスペースが設けられ、それらの活動から何を学んだのか、そして今後どんな展望を描いているのか、言語化するよう設計されている。

このe-Portfolioを、2018年2月1日現在で約1200の高校が利用。全国の高校の数は5000校なので、約4分の1が利用している計算になる。また、2018年8月から記録が大学に提供され、出願基準到達者の抽出や主体性の評価などに用いられる見通しだ。現状、導入を決めているのは78の大学(短大含む)で、早稲田や法政、明治、立教といった私立上位校、あるいは大阪大や東京医科歯科、東京外語大など国立大学が名を連ねる。

大学受験で無視できない存在になった「ポートフォリオ」が、高校の教員や高校教育の関係者の間でホットワードとなり、さまざまな研究会やメディアでこの言葉が使われているのだ。

また就職活動においても、昨今ポートフォリオに似た取り組みが広がっている。2017年度に厚生労働省と文科省が協同で開始した「キャリア・パスポート(仮称)」という事業で、「児童生徒が自らの学習活動等の学びのプロセスを記述し振り返ることができるポートフォリオ的な教材」のことだ。2018年度の文科省予算でも、このキャリア・パスポートの普及定着に予算が確保されている。

「JAPAN e-Portfolio」と「キャリア・パスポート」に共通する思想は、これまで十分に記述、記録してこなかったような学びや成長の記録を一貫して記録、蓄積し、それを大学入試や就職活動といった、次のステップへ踏み出すタイミングで生かそうということである。なぜ今、こうした取り組みが教育現場で積極的に始まっているのだろうか。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国とサウジが外相会談、地域・国際問題で連携強化

ビジネス

グーグルがパプアに海底ケーブル敷設へ、豪が資金 中

ワールド

トルコ、利下げ後もディスインフレ継続へ=中銀総裁

ビジネス

印インディゴ、顧客に5500万ドル強補償 大規模欠
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中