最新記事

日本経済

小売業界、百貨店からスーパー、コンビニまで投資続く デジタル化や人手不足対応など急務

2018年4月13日(金)18時35分

4月13日、小売り企業がEC(電子商取引)対応や店舗刷新などに高水準の投資を展開している。写真は都内の百貨店で2016年9月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

小売り企業がEC(電子商取引)対応や店舗刷新などに高水準の投資を展開している。アマゾンに代表されるECの急拡大は消費の世界を大きく変えているほか、人手不足や少子高齢化などの環境変化への対応も急務だ。堅調だった消費も、2019年10月の消費増税や東京オリンピック後の不況など先行きの失速懸念が拭えない。積極投資の効果をここ数年で最大化する必要があり、各社は時間との競争を続けている。

EC対応、模索中

J.フロント リテイリング <3086.T>の山本良一社長は「経営を取り巻く環境は、すさまじいスピードで変化の途上にある。まさに、時代の大転換期だ。リスクへの対応力いかんで企業間格差が生じる」と指摘。リスクマネージメント委員会で138項目のリスクを抽出、そのうち重視する6項目を経営方針に組み入れ、実行計画を進めることとした。

6項目は、1)19年10月の消費増税や東京オリンピック後の不況の発生懸念、2)顧客の変化・少子高齢化・人生100年時代、3)テクノロジーの進化、4)所得の2極化・消費の2極化、5)CSR(企業の社会的責任)の重要性アップ、6)シェアリングエコノミーの進展。これらは、個社の問題ではなく、小売り業界が直面する共通の課題といえる。

イオン <8267.T>は11日、米ベンチャー「Boxed」への出資を発表した。岡田元也社長は「テクノロジーや技術を持つ企業への出資、参画、共同作業など、これからさらに進めていく。イオンの現在の状況を変えていかなければいけない」と述べ、あらためて、デジタル化への取り組み強化の姿勢を明確にした。

営業収益に占めるEC比率を21年2月期には12%(16年2月期は0.7%)に引き上げる目標を掲げており、3年間でIT・物流に5000億円の投資を行う計画だ。初年度となる19年2月期は、5070億円の投資のうち、ECなどのインフラ投資に1107億円を振り向ける。

ただ、現時点では「ECは試行錯誤しているのが正直なところ。トライアルしているが、百貨店のECビジネス拡大はたやすいことではない。でも、ECを無視するわけにはいかない」(山本社長)という小売り業も多い。同社も外部の人材を入れて、ECビジネスのあり方の議論を進めている段階。イオンの岡田社長も「始まったばかり。何が肝心かは分かっているつもりだが」と話すように、ECビジネスのしっかりとした絵を描くには至っていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中