最新記事

治療薬

「バイアグラが大腸がんのリスクを軽減する」という研究結果

2018年3月28日(水)18時00分
松岡由希子

バイアグラが大腸がんのリスクを軽減する spflaum1-iStock

<米ジョージア医科大学の研究で、バイアグラに大腸がんのリスクを軽減する働きがあることが明らかになった>

「シルデナフィル」は、先発薬である米製薬会社ファイザーの商品名「バイアグラ」としても広く知られる、勃起不全(ED)や肺動脈性肺高血圧症の治療薬だ。血管拡張を促進する作用を有することから、慢性心不全や肺高血圧症など、様々な疾患の治療に活用されてきたが、このほど、この治療薬に大腸がんのリスクを軽減する働きがあることが明らかになった。

腫瘍性ポリープの数が50%減った

米ジョージア医科大学のダレン・ブラウニング博士を中心とする研究プロジェクトは「バイアグラが、がん化する恐れのある腫瘍性ポリープの形成を半減させた」との研究結果を米国癌学会(AACR)の学術専門誌で発表した。

この研究プロジェクトでは、飲み水にバイアグラを入れ、遺伝子変異マウスにこれを4週間飲ませる実験を行ったところ、マウスの腫瘍性ポリープの数が50%減った。

このメカニズムについて、ブラウニング博士は次のように考察している。バイアグラには、腸内層に作用する「環状グアノシン一リン酸(cGMP)」を分解する「5型ホスホジエステラーゼ(PDE-5)」を阻害する働きがある。

つまり、バイアグラの働きによって「環状グアノシン一リン酸」のレベルが上昇することで、腸内での過剰な細胞増殖を抑制し、正常細胞の分化を増加させ、「アポトーシス」と呼ばれる積極的・機能的な細胞死のプロセスを通じて異常細胞が自然に排除されるというわけだ。

便秘薬「リナクロチド」も効果があったが、副作用も

また、この研究プロジェクトでは、バイアグラと同様に「環状グアノシン一リン酸」を増やす作用を持ち、便秘や過敏性腸症候群の治療に用いられる「リナクロチド」についても、遺伝子変異マウスに対する実験を行った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中