最新記事

中国政府

米大学キャンパスにも中国の監視の目が光る

2018年3月13日(火)16時30分
ベサニー・アレン・イブラヒミアン

アメリカの中国人留学生が中国政府を批判することはますます危険に Jonathan Ernst-REUTERS

<キャンパスで活動する中国人留学生団体が習近平体制の情報収集とプロパガンダの手段に?>

ジョージタウン大学の中国人学生・研究者連合会(CSSA)は、旧正月のイベントや学術フォーラムを開いたり、中国人留学生同士の交流と互助を支援する団体だ。しかし、フォーリン・ポリシー誌が入手した資料によれば、この団体は年間予算の約半分を中国政府から受け取っている。

11年9月にジョージタウン大学大学院生自治会に提出した予算申請書によれば、この団体は同年度、1学期当たり800ドルを駐米中国大使館から受け取っていたという。資金は旧正月のパーティーなどのイベントの開催費用に充てていると、彼らは主張する。

金額は小さいが、アメリカの大学の中国人学生団体と中国政府の結び付きを立証する資料と言える。両者の関係は以前から取り沙汰されてきたが、裏付けを得ることは難しかった(ジョージタウン大学CSSAは、複数回にわたる取材要請のメールに回答していない)。

中国共産党の影響力が大学のキャンパスに及ぶことへの懸念は、FBIも抱いている。クリストファー・レイ長官は先頃、議会でこう述べた。「大学などで......従来とは異なるタイプの情報収集者が活動するケースは、全米のFBI支局の大半で確認されている」

現在、アメリカで学ぶ中国人留学生は約35万人。アメリカの大学で活動するCSSAは約150団体に上る。CSSAの最大の役割は、留学生が外国での暮らしに順応するのを助けることだ。しかし、中国政府はCSSAを「情報収集」とプロパガンダの手段と見なしていると、アメリカに亡命した元中国国家安全省職員の李鳳智(リー・フォンチー)は言う。

習近平(シー・チンピン)体制の下、中国共産党は、国外に住む中国人の監視とコントロールを強めてきた。16年には、教育省が国外の中国人学生に対し、党の指示に従うよう求める命令も発している。

中国人留学生が中国政府の政策を批判することはますます危険になっている。89年の天安門事件で民主化運動を率い、今はアメリカの大学で中国現代史を教える王丹(ワン・タン)によれば、中国人学生は学会でほとんど発言しないが、それでも共産党シンパが会場で写真を撮り、誰が何を発言したか記録するという。

17年5月、メリーランド大学で学ぶ女子学生の楊舒平(ヤン・シューピン)が卒業式のスピーチでアメリカの民主主義を称賛し、中国の抑圧的な環境と対比させて「自由な空気」を満喫していると述べたことがあった。すると、楊は中国のソーシャルメディアで大々的なバッシングを受け、家族の住所までネット上にさらされた。

このとき、メリーランド大学のCSSAは、楊を真っ向から批判する動画を作成した。楊はのちに、謝罪に追い込まれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中