最新記事

アメリカ経済

全米で人手不足から賃金上昇 州データに読み取る「転換点」

2018年2月8日(木)19時12分

2月5日、米労働者が長年待ち望んでいた賃金上昇が、全米の広範囲に広がっていることが、ロイターが各州データを分析した結果、明らかになった。カリフォルニア州で2013年9月撮影(2018年 ロイター/Mike Blake)

米労働者が長年待ち望んでいた賃金上昇が、全米の広範囲に広がっていることが、ロイターが各州データを分析した結果、明らかになった。失業率低下がようやく賃金を押し上げ始めていることを示している。

昨年は、全米で少なくとも半数の州において平均賃金が前年を大きく上回る3%超上昇した。金融危機による歴史的なリセッション(景気後退)の10年を経て、失業率が記録的低水準に迫った州の数も急増した。

州レベルで集計されたデータは、国家統計からは見えてこない転換点を示唆している可能性がある。

過去4年にわたり、米国経済は新たに1000万人の雇用を生み出し、完全失業率は2000年以降で最低水準にまで低下している。だが、賃金の上昇は見られなかった。

とりわけトランプ大統領の就任初年、企業は恩恵を受け、株式市場が上昇したにもかかわらず、こうしたズレは、米連邦準備理事会(FRB)の専門家を悩ませ、格差拡大を懸念する政治家をいら立たせ、一般的な米国民の足かせになってきた。

トランプ大統領は、自身が推進する法人税減税を柱とする税制改革が企業マインドを高めていると強調する。また、先月30日に議会で行った一般教書演説では、米国民は長年にわたる不況を経て、ようやく賃金上昇を目にしていると語った。

確かに、1月の時間当たり平均賃金は前年比+2.9%で、約8年半で最大の上昇率となった。とはいえ、エコノミストが健全な経済の兆候とする3.5─4%の上昇率には至っていない。

ロイターによる分析と全米各地の企業への取材から、賃金上昇は製造業からテクノロジー、小売業に至るまでさまざまな業種で起きていることが明らかとなった。だが、どの程度トランプ大統領の功績としていいのかについては、企業経営者の反応はまちまちだった。リセッション(2007─09年)のピーク時に10%を記録した失業率は、ここ数年の雇用成長で6ポイント近く低下した。

「この会社にいる誰もが、ここを辞めてもっと稼ぐことができると分かっている」と、ニューヨーク州で中古車ディーラーにソフトウエアを販売するフレイザー・コンピューティングのマイケル・フレイザー社長は語る。対策として、同社は昨年末に6.1%の賃上げを行ったという。前年は3.7%の賃上げだった。

オレゴン州ポートランドのソフトウエア企業「Zapproved」は、プログラミングの学校を卒業したばかりの人たちを雇い、最大3カ月の研修を行っているという。これまで雇っていたソフトウエア開発経験者の賃金が高くなり過ぎたためだ。それでも同社では、「賃金相場に遅れを取らないようにする」ため、年2回の昇給を実施していると、モニカ・エナンド最高経営責任者(CEO)は話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米当局が欠陥調査、テスラ「モデル3」の緊急ドアロッ

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める

ワールド

24年の羽田衝突事故、運輸安全委が異例の2回目経過

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体が技術供与 推論分野強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中