最新記事

中国戦略

孔子学院が遂にFBI捜査の対象に

2018年2月20日(火)17時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

こうして孔子否定から孔子肯定へと方針が転換されたのである。いずれにしても、一党支配体制の維持を強化していく統治の道具であることに変わりはない。

90年代後半から2000年代初期にかけて、中国の国家教育部が管轄する「国家漢語国際推広領導小組弁公室(略称:漢弁)が中心となって孔子学院創設の方針が研究され始めた。

そのころ筆者は筑波大学の留学生センターで100カ国以上の国から来ている外国人留学生の指導教育に従事していたが、そのときにパリのINALCO(イナルコ。フランス国立東洋言語文化研究所)から来ていたフランス人留学生の世話をしてあげたことがある。彼はINALCOの初期の目的は、東洋の植民地支配にあり、イギリスなどと競って、どの国がより多くの植民地を獲得できるかを目指して、先ずはその国の「言語」を学んで植民地支配を完遂するという戦略で動いていたと教えてくれた。

これは非常に重要なファクターで、中国はアメリカを凌駕するには、世界共通語として使われている英語の代わりに中国語が使われるようにならなければならないと考えていたのである。つまり、世界制覇のための長期的な道具として漢語(中国語)を広めるのを初期の目標としていた。だからINALCOに関しても深く研究しており、筆者も多少なりとも質問されたりしているので、リアルタイムで孔子学院創設過程を経験していることになろうか。

表面上は友好を軸とした文化交流を推し出すが、実態は思想文化的に親中派を増やし、世界を「中国化」させて世界制覇を達成するのが目的であることは明白だ。そのためにはかつてのコミンテルンのように赤裸々に共産主義であってはならず、「孔子」という多くの国の人が知っている「文化の衣」を羽織ることにしたのである。

日本は無防備

2016年までに139の国・地域に505の孔子学院、1008の孔子課堂(孔子学級)が設けられており、中国は2020年までには全世界に孔子学院を普及させるとしている。

毛沢東は中国共産党による革命を輸出し、世界革命へと発展させていこうとしたが、文化大革命発動により失敗に終わった。

習近平(国家主席)は、毛沢東の失敗を取り戻し、友好や語学の普及あるいは文化交流などをちりばめて、中国共産党思想を全世界に浸透させようとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロシア国営宇宙企業トップ、スターリンクの対抗事業開

ワールド

EUは26年末までにロシア産原油輸入停止を、ポーラ

ワールド

米銃撃事件で警官3人死亡・2人重傷、ペンシルベニア

ビジネス

日経平均は史上最高値を更新、足元は達成感から上げ幅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中