最新記事

#MeToo

フランス、路上のセクハラが1万円以上の罰金対象に

2018年2月6日(火)20時00分
松丸さとみ

今年1月9日、女優のカトリーヌ・ドヌーブを含む100人の著名フランス人女性が、「#BalanceTonPorc」の動きが「魔女狩り」的で、性的自由の脅威になっている、と仏紙ル・モンドに連名で寄稿した。ガーディアンによると寄稿文は、「レイプは犯罪だが、誰かをしつこくまたは不器用に誘うことは、犯罪ではない」と主張している。

NYタイムズによるとさらに、「バスや地下鉄で男性が女性に体をこすりつけてマスターベーションをしても、それはセクハラとしては比較的ささいなもの」なので、女性が永遠にトラウマを抱える必要などない、と寄稿文は女性を励ましているとしている。

しかしこの100人の著名人の見方は一部から大きく批判され、ドヌーブは謝罪するに至った。ワシントンポストジ・アトランティックによると、この寄稿文への批判は主に若い世代で多く、34歳のシアパ男女平等担当副大臣も例外ではないという。

フランスのラジオ番組フランス・キュルチュールでのインタビューでシアパ副大臣は、「地下鉄で男性が女性の同意もなく性器をこすりつけてくるのは最長3年の禁固刑および7万5000ユーロ(約1000万円)の罰金の対象となる暴力行為であることを、若い女の子たちに理解させるのに苦労して」おり、女性がそのようなことをされたと主張することは恥でも何でもなく、寄稿文のような考え方は危険だ、と述べ危惧を示した。

また前述のNYタイムズの記事は、寄稿文の主張は「古臭く」「誠実でない」と受け止めている女性が多い、と伝えている。記事ではさらに、「ささいなこと」という主張への反論としてフランス人ジャーナリストのナディア・ダアムがツイッターに書いた、「19歳の時にバスの中で男にコートの上に射精された。コートは捨てたし、そのあと2年間あのバスには乗らなかった」というツイートを英訳して紹介した。

気を引こうとする口笛がすでに違法の国も

デイリーメールなどによると、この法案の計画が最初に報じられた昨年秋の段階では、罰金対象の行為として「ウルフ・ウィッスリング」と呼ばれる、注意を引くために吹く口笛も含まれていた。

しかし今回の報告書で示された罰金対象の行為にはなっていないようだ。含まれると報じられていた昨年10月には、フランスのお隣の国、英国では、「ウルフ・ウィッスリングを犯罪行為として罰金対象にすべきか?」という議論が、朝の人気番組「ディスモーニング」でもなされるなど物議を醸していた。

前述のタイム誌によると、こうした口笛や言葉でのセクハラがすでに罰金の対象となっている国もある。ポルトガルでは120ユーロ(約1万6000円)が科せられる可能性があり、ベルギーでも2014年からウルフ・ウィッスリングが違法となり1年間の禁固刑および1000ユーロ(約13万7000円)の罰金が科せられる可能性もある。ニュージーランドでは、通りでのハラスメントは最高1000ニュージーランドドル(約8万円)の罰金となる可能性があるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランの報復攻撃にさらされるイスラエル、観光客4万

ビジネス

レアアース磁石確保に苦慮とフォードCEO=ブルーム

ワールド

カンボジア、タイとの国境紛争で国際司法裁判所に解決

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕と報道 標的リスト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中